日本的な葬送儀礼、つまり仏式の葬式における一連の流れの中で、贈与交換という視点からそれぞれの儀式を捉えてみる。地域の習慣や葬儀の規模、また宗教によって当然差があると思うが、一般的なものと考えられるものに対象を絞る。
家に死者が出ると遺族はその日の夜、または数日のうちに通夜を執り行う。死者の枕元には枕飾りが施される。その仏具や供え物の中に「枕飯」がある。「一膳飯」と呼ばれ、盛り切りの飯のことで、山盛りのご飯の上に箸を一膳、まっすぐに立てる。ご飯は枕飯の分だけ炊いて全部を盛る。この枕飯には何の意味があるのだろうか。死者が成仏し守られるようにとのことだが、果たしてそれだけだろうか。このご飯を食べるのは当然死者である。死者に食べさせる、つまり死者に贈るご飯の中に込めるものは何であろうか。死者はこの世からあの世に行く際にこのご飯を食べるのであろう。ところが枕飯の分だけ炊くということは、遺族は食べないということである。なぜ食べないのか。ここでインドの儀礼における米の立場について考えてみる。インドにおいて米は炊かれると、その際に不浄なものが水を介して入るとされる。これと同様に考えるのであれば、遺族が枕飯を食べないことは理解できるが、遺族は不浄なものを死者に贈ることになる。そして死者は不浄なものを食べてあの世に向うことになる。遺族にとっては家の中の不浄なものが外へ出て行くので良いことかもしれないが、これでは死者に失礼ではないか。そこで私は二つの仮説を立ててみた。まず一つ目は、死者は不浄なものも含めて枕飯を持っていくということである。死者によりこの家から不浄なものはなくなる。確かに米は不浄なものかもしれないが、日本人の主食であり、日本文化には欠かすことの出来ないものである。
日本的な葬送儀礼、つまり仏式の葬式における一連の流れの中で、贈与交換という視点からそれぞれの儀式を捉えてみる。地域の習慣や葬儀の規模、また宗教によって当然差があると思うが、一般的なものと考えられるものに対象を絞る。
家に死者が出ると遺族はその日の夜、または数日のうちに通夜を執り行う。死者の枕元には枕飾りが施される。その仏具や供え物の中に「枕飯」がある。「一膳飯」と呼ばれ、盛り切りの飯のことで、山盛りのご飯の上に箸を一膳、まっすぐに立てる。ご飯は枕飯の分だけ炊いて全部を盛る。この枕飯には何の意味があるのだろうか。死者が成仏し守られるようにとのことだが、果たしてそれだけだろうか。このご飯を食べるのは当然死者である。死者に食べさせる、つまり死者に贈るご飯の中に込めるものは何であろうか。死者はこの世からあの世に行く際にこのご飯を食べるのであろう。ところが枕飯の分だけ炊くということは、遺族は食べないということである。なぜ食べないのか。ここでインドの儀礼における米の立場について考えてみる。インドにおいて米は炊かれると、その際に不浄なものが水を介して入るとされる。これと同様に考えるのであれば、遺族が...
参考文献なども載せていただけるとありがたかったです。