子を持つ親の中に、思いやりのある子どもに育ってほしいと願う親は多く存在する。思いやりなどの子どもの心や人格は、先天的な資質によって決定されるのではなく、親の心持と接し方によっても大きく変化するものである。つまり、親の子どもへのはたらきかけ次第で思いやりを育てることもできるのである。本稿では、子どもの思いやりを育てる為に、どのようなはたらきかけをすればよいのかを論じる。
思いやりとは、相手の立場を思って想像力を働かせ、その気持ちを理解する気持ちが自然に沸き上がるものであり、道徳観やマナーとしての行動とは異なるものである。つまり、思いやりとは言葉で言い聞かせて育つものではなく、感じる気持ちの問題である。
思いやりの心を構成する要素は、相手の気持ちを理解・共有する能力の共感、相手の立場になり考える能力の役割取得能力、他者を考えて行動する向社会的行動など、複数のものからなる。そのなかでも、最も重要なものは共感である。共感とは、相手が感じている感情と同じ、もしくは同等の感情が自分にも起こることである。この共感が生じるためには、表情の模倣が必要である。なぜなら、顔の表情は感情を感じる強さを増加...