法学教室の連載されていた問題の解答です。参考までに。
第20回 苦しい台所事情
本件の事案において、甲社取締役であるAおよびBは、乙社に対し、429条1項の責任を負うか。429条1項の責任が認められるための要件は、①任務懈怠、②悪意・重過失、③損害の発生、④相当因果関係、である。では、②悪意・重過失の対象および③損害の範囲は何か、取締役の対第三者責任の法的性質と関連して、問題となる。
429条1項の趣旨は、会社の行為はその取締役による職務執行に依存していることから、第三者を保護するため、取締役にも責任を負わせることにある。したがって、429条1項は、第三者を保護するため、なるべく広範な損害についての賠償請求を認め、第三者の挙証責任を軽減したものと考えられる。
そうであるならば、429条1項の責任の対象は、取締役の行為によって第三者が直接被った損害(直接損害)だけでなく、会社に損害が生じた結果第三者が間接的に被った損害(間接損害)も含まれる。また、悪意・重過失は、取締役の任務懈怠についてあれば足りる。
以上を踏まえ、AおよびBの責任について、検討する。
Aの責任について
小問(1)について
乙社は、債務超過に陥った甲社と締結した売買契...