わが国の貧窮制度は「恤救規則」の施行で始まった。救済の原則として、「人民相互の情」による私的活動を救済の原則とし労働能力がなく、誰からの援助も受けられない「無垢の窮民」が対象であり、救護の実施は米代の給付と極めて限定的であった。その後昭和恐慌の影響を受け1926年に救護法が制定され、さらに第二次世界大戦直後の1946年にはGHQの救貧思想に基づいた旧生活保護制度が制定された。この制度は無差別平等、国家責任、最低生活保障を原則とするものの、保護請求権、訴訟権は認められなかった。1950年には、日本国憲法第25条に規定された生存権を具体的に保障するために現行の生活保護法が制定された。この制度は国家の義務として生活に困窮するすべての国民を対象に生活を保障している。さらに要保護者に対して保護請求権と訴訟権を保障し、国民の権利として、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、また「自立を支援」することも明記されている。
歴史的背景を踏まえ、現代社会では、生活における自己責任(自助)の原則に基づいて、それぞれの暮しが営まれている。そしてその原則を維持するには、社会的な生活保障なしでは成り立たない。...