はじめに、1990(平成2)年の福祉8法の改正から2000(平成12)年の介護保険制度の施行の10年間で、高齢者福祉サービスの決定権が都道府県から市町村、市町村からサービス利用者本人へと移動した。これは行政処分としての「措置」から、「自己決定の尊重」に主眼をおき、高齢者自身のことは自分で選択するという「契約」へ変わったということである。
これに伴って浮上してくる問題が、判断能力が十分でない高齢者についてはどういった方法で「自己決定の尊重」を実践すれば良いのかということである。また、高齢者の財産を狙った悪徳商法も後を絶たない。このような高齢者の問題の中で被害を防ぎ、高齢者ができる限り自立した生活を送るために、介護保険との車の両輪としてつくられたのが、この成年後見制度である。
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などにより、判断能力が不十分になっても社会で普通の生活を営めるような保護や支援を図るために、2000(平成12)年から始まった。
この新たな制度の基本理念は、ノーマライゼーション(障害者や高齢者等の社会的に不利を受けやすい人々が、社会の中で他の人と同じように生活し活動する...