刑法論文書き方例題(強盗罪、傷害罪、強要罪、窃盗罪、共同正犯)
第1 Aに対する罪
1.強盗罪の検討
(1)暴行または脅迫について
強盗罪(236条)の「暴行または脅迫」はその刑の重さや恐喝罪(249条)との区別から相手の反抗を抑圧する程度の暴行または脅迫が必要である。YはAの胸倉をつかむという有形力の行使をし、自分の空の内ポケットに右手を突っ込み銃を持っている振りをしながら激しい口調でAの身体・財産に対する害悪の告知をしている。人気のない場所で助けを求めることも難しく、Yの運転する車中という密室では逃げる場所もなく、X組の若頭であるYにこのような暴行・脅迫をされれば、通常人は抵抗が困難である。よって、犯行抑圧程度の暴行・脅迫があったと認められる。
(2)財物性について
Yは(1)の行為によってA名義の預金通帳と印鑑の交付を受けている。預金通帳と印鑑は預金の引き出し権限を表象するものであるが、やくざの風貌のYが銀行に赴けば通帳と印鑑だけでは振り出すことは困難であり、通帳及び印鑑交付の時点で財物を受け取ったと考えるべきではない。むしろ、YはAに銀行支店長に電話を掛けさせ、500万を用意...