日本における人馬の関係の歴史を探る
はじめに
野生種がほぼ絶滅し、家畜として人間と生きる他なくなった馬は、輸送、農耕、戦闘などの手段として人間と共に文明を築き上げてきたといえる。しかし現在、ほんの60年ほど前までは軍馬や農耕馬として身近な存在であったとはほとんど想像もできないほどに、日本における馬と人との関わりは減少してしまった。現代の日本に馬の生き延びる道はあるのだろうか。
この論文では、日本の人馬の歴史を見つめながら、人との関わりにおける家畜としての馬の特殊性を指摘し、これからの人馬の関係の展望を考察する。
1 日本の馬はどこから来たか
現在の段階ではこの疑問に対するはっきりとした答えは出ていない。
日本で発見された最も古いウマ科の化石は、約1500万年前に生息したアンキテリウムという馬の祖先の上顎、下顎骨である。この生物はタヌキかキツネほどの大きさで、現在の馬とは異なり三指であった。約500万年前になると今日の馬と同じ一指のエクウスが生まれ、全国十数か所で化石が発見されている。しかし氷河期が終わり地球の温暖化が進んだことにより、日本の野生馬はここで絶滅してしまったと考えられている...