1.温熱刺激
作用
温熱刺激とは,温めることによって血管を拡張させ,血流を増加させる。また,浸出液の吸収を早め神経への圧迫を軽減させる.それによって痛みを軽減させることができる。
禁忌
①急性炎症や外傷の治療初期(化膿を早めるため).
②治療部位に悪性腫瘍があるとき(転移を早めるため)。
③出血傾向が強いとき(出血を促進させる).
④多発性硬化症の悪化,蕁麻疹の発生).
2.冷却刺激
作用
冷却刺激とは,冷やすことによって血管を収縮させ血流を減少させる.それによって浮腫の軽減,痛覚の域値の上昇,機能の抑制,細菌活動の抑制などに作用する.したがって,痛みを軽減させ局所の炎症・化膿を防止することができる.
禁忌
①寒冷アレルギー,レイノー現象をもつ患者(症状を悪化させるため).
②損傷の治癒過程がかなり進んでいるとき(かえって損傷を与えてしまうことがある).
ポイント
患者の年齢・状態に合わせた罨法を正確に判断し行うこと
常に患者の安全・安楽を念頭におき適切な方法で行うこと
罨法を行っている際の観察を怠らないこと
罨法の効果が十分にみられたら使用を速やかに中止すること
湯たんぽ
目的
①皮膚温の上昇を図り,保温する.②温熱刺激を与え治療効果を高める.
必要物品
①湯たんぽ(金属性・ゴム性),②ピッチャー(60~70℃の湯入り),③水温計,④湯たんぽカバー
ポイント
体温の低下している患者の保温,またはその予後のため,皮膚温の上昇また寝床温度の上昇を図る際に行う
使用物品の破損の確認を必ず行う
湯たんぽに.入れる湯の温度は,60~70℃とする
カバーはしっかりかける
低温熱傷の予防のため観察を怠らない
特に注意すべき点
①低温熱傷を起こすことが考えられる場合は,湯たんぽに入れる温度を60℃と少し低めの温度とし,また置く位置にも十分な配慮を行い,その後の観察も頻回に行う.
②絶対に直火にかけてはいけない、
③体に直接使用する場合はゴム性を用い,準備する湯は60℃と低めにする.
1.湯たんぽの破損はないか確かめる、60℃程度の湯を実際に入れ,水漏れや栓の破損がないか確認する
●冷たい水などで水漏れを確認しないこと
●特に栓の部分の破損を注意深く点検する
○温度が低すぎると確認後に入れた湯の温度が低下してしまう
○湯たんぽに破損があればその部位から,湯が漏れて熱傷の原因となる
2.ピッチャーに湯を入れ水温計で温度の確認をする
①金属性ならば60~70℃
②ゴム性ならば60℃
③どちらを使用する場合でも老人,乳幼児,意識障害,麻痺のある患者に使用する際は60℃とする
●ゴム性の湯たんぽに60℃以上の湯を入れないこと
○ゴム性の湯たんぼに高温の湯を入れると熱による破損の原因となりうる.また,金属の湯たんぽを直火にかけることも破損の原因となり湯たんぽ自体の金属の温度は必ず熱傷となる温度となっている
●金属性の湯たんぽであっても決して直火にかけないこと
●直接からだに貼用する場合はゴム性のものが適している
3.湯を湯たんぽに2/3入れる
●湯を入れすぎたり,また少なすぎたりしないよう注意すること.図4のように全体に対して2/3程度とする
○湯の量が多いと不安定となり,少なすぎても冷めやすい
4.湯たんぽ内にある空気を出して栓を閉める
○特にゴム性のものは入った空気により温度が低下しやすい,金属性のものは空気が抜きにくいができるだけ抜いて使用すると温度の低下を多少防止できる.
5.湯たんぼの回りの水滴を拭き取り逆さにして水漏れがないかもう一度確認する
○湯を入れたことで破損することも考えられるのでさらに確認するとより安全である
6.カバーをかけカバーの口を結ぶ.そのとき結び口の紐は,中に入れる
●必ずカバーはかけること
○直接湯たんぽを使用すると表面温度の上昇につながり,また仮に栓などに身体がぶつかると漏れの原因となり大変危険である
7.湯たんぽを患者のもとへ運ぶ.そして患者に湯たんぽを貼用することを説明する
○不安をとり協力を得るのに有効である
8.患者から1Ocm離して貼用する
●寝床保温の目的で使用する場合は表面温度が45℃以上にならないようにすること.体動が激しい患者に使用する際は10cmより少し離して使用することより安全である
○直接身体に触れたり近すぎると,寝床温度の上昇,熱傷の原因となりかえって苦痛を引き起こす
9.湯たんぼ使用時の観察をする
●使用開始時刻,使用時間,患者の安楽の程度,皮膚の状態(発赤・熱傷の有無,温度)などを明確に記録しておく
○患者の状態を把握し異常の早期発見に有効である
ホットパック
目的
①皮膚に直接温熱刺激を与えることによって,血管拡張を促し疼痛を軽減させる.
②便秘をしている患者の排便を促す.
③炎症産物の吸収を促す.
必要物品
①湿布用布(タオル・リント),②湿布覆い布(厚手の①より大きいもの),③潤滑油,
④湿布絞り棒・湿布絞り袋,⑤大きめのボール・蓋,⑥60~80℃の湯入りピッチャー,⑦油脂またはビニール,
⑧水温計,⑨(医師)メントールなどの薬剤,⑩腹帯・三角巾
ポイント
身体の一部に温熱刺激を与えることによって、血液循環を促進させ治療効果を上げたい場合.また筋肉の緊張の緩和、便秘などの腹部膨満を軽減させ排便を促す
60~80℃の湯で湿布用布を絞り皮膚に貼用する
皮膚に直接貼用するため火傷に十分注意すること
貼用前後の皮膚の異常を観察すること
特に注意すべき点
①皮膚に直接貼用するので,火傷を起こさないように皮膚にあたる湿布布の温度に十分注意すること.
②主に平滑筋の緊張を取り除くことができるので身体のあらゆる部位に使用できるが,必ず皮膚の状態を観察し一般状態に注意しなければならない.
③皮膚への貼用の限界温度は45~50℃であるが,温度の感じ方には個人差がある,そのため貼用時に患者自信に確認を得るのはもちろんであるが,貼用してから多少時間が経過すると体感温度も変化するため,再度患者に問診が必要となる.
1.湿布布を貼用する部位に適当な大きさに折り湿布絞り袋の中に入れる
●必要部位を十分おおうことのできる入きさであること.大きすぎても小さすぎても適していない
○大きすぎると他の寝具を湿らせる原因となり小さすぎると十分な効果が得られない
2.ボールに60~80℃の湯を用意する
3.湿布絞り袋の両端に絞り棒を通し,両端はボールから出して湯を浸透させる.よく浸透させるために,片方の絞り棒で湿布絞りの中央部をつつくとよい
○湿布部位に十分にまた均等に効果を与える
4.十分に浸透したら両手でひっぱるように,できるだけ固く絞る
5.絞った絞り袋はそのままで,絞り棒をぬく
6.今まで湯の入っていたボールの湯を素早く捨て,その中に絞り袋を広げずにそのまま入れ蓋をする
○広げてしまうと湿布布が空気に直接触れて,温度が低下する
7.患者のもとに絞り袋の入ったボール,ピッチャーにあらかじめ湯せんしておいた潤滑油に浸した綿花を入れ,覆い布,油紙またはビニール,腹帯または三角巾を運ぶ
8.患者にこれから行うことについて説明し,カーテンやスクリーンをしてプライバシーの保護をする
○患者の蓋恥心を最小限にとどめる
9.貼用部位を出し,潤滑油の浸した綿花をその部位に貼用する
○皮膚を保護する
10.その間にボールの蓋を開け,絞り袋の中から湿布布を取り出し広げて,看護師の前腕内側で火傷の可能性はないか温度を確認する
●皮膚が高温に耐えられる限界温度は45~50℃といわれている。糖尿病や血管の疾患のある患者,皮膚が敏感な患者には40℃以上にならないよう配慮する.実際に看護師が確かめるのがよい,日ごろから温度の感覚を身につけておく必要がある
11.貼用部位に湿布布を皮膚に隙間なく貼用する.その上に油脂またはビニールをあて湿布覆い布でおおう
○熱の放散を避ける
12.その上から周定のため,腹帯または三角巾で包帯する
長時間一定の温度を保持したい場合は,電気あんかやかいろ,湯枕を用いるとよい.湿布の温度の保持時間は,15分程度とされている
13.患者の衣服を元に戻し,以後皮膚の状態や一般状態を観察する
●皮膚の状態,患者の安全・安楽の確認
○患者の状態を把握し異常の早期発見に努める
氷枕・氷嚢・氷頸・CMC製品
目的
①疼痛の緩和.
②心身の安静・安楽.
③腫脹・充血の軽減・予防.④解熱.
⑤止血.
必要物品
氷枕:①氷枕・とめ金,②氷(成人用で約1kg),③氷枕カバー,④コップ1杯の水,⑤氷砕器または氷割りと木箱,
⑥ざる,⑦氷すくい
氷嚢:①氷嚢・口ひも,②氷嚢カバーまたはガーゼ,③氷,④コップ1/2杯の水,⑤氷砕器または氷割りと木箱,
⑥ざる,⑦氷すくい,⑧氷嚢つり
氷頸:①氷頸・口ひも,②氷頸カバーまたは三角巾,③氷,④コップ1/2杯の水,⑤氷砕器または氷割りと木箱
CMC製品:①アイスノンまたはマイクーラーまたはエバーアイスなど,②ビニール,
③カバーまたはタオルや三角巾
ポイント
主に高熱時や頭痛など皮膚温の低下,疼痛の緩和に用いられるが,使用部位や患者の好みによっても形態がさまざまである
患者の頭部や頸部,また皮膚に近く太い動脈のある部位に貼用するが,使用目的の効果を得るのはもちろん患者の安全・安楽を常に念頭におかなければならない
使用においてはあくまでも基本であり,患者によって温度や形態には好みがあるので基本は大切であるが患者の意思も尊重することが必要である
特に注意すべき点
①以下の患者には禁忌とする.
寒冷アレルギー・レイノー病
リウマチ様...