ポール・オースター「孤独の発明」
この詩は内容だけでなく、形式も一般のものとは差異を感じる。第一章は「見えない人間の肖像」と題して(フィクションなのか自伝なのかは定かではないが)存在感の希薄な父について書かれている。また、第二章では語り手はAという三人称に変更されている。この章では、父と子をめぐる考察に加え、部屋という空間で孤独に生きた幾人もの作家の生が、彼らの文章の引用とともに示される。アメリカの東部の片田舎に引きこもり、そこからほとんど出ることもなく試作に励んだエミリーディキンソンの部屋。塔にこもり、狂気すれすれの生活で詩を書いたヘルダーリンの部屋。旧約聖書の中のヨナが、神の教えから逃亡し...