エミリー・ディキンスンの
非現実における時間・魂のイメージ
はじめに
19世紀半ばのアメリカ文学における作品は、どことなく現状に満足できず、空想上の世界を広げ非現実の世界を追求するような動きがあるように、本講義を受けて感じた。今回は、その中でも特に印象に残った、エミリー・ディキンスンの詩を考察してみたいと思う。
ディキンスンの詩~肉体と魂と他者へのかかわりについて~
ディキンスンの詩を読んだときに感じるのは(死生観とでもいうのだろうか)人間の魂の存在だ。一般的に人間は死を迎えると、肉体は消滅し、個としての存在がなくなり、その生命を閉じるように思われている。そのような状態になれば、当然他者と接することも、会話を交わすこともできない。しかしながら、仮に人間の魂というものが存在するならばその魂は死の際に消滅するのだろうか。肉体が消滅することで人間個体として他者とかかわることはできなくなるが、例えば家族に残された遺伝子などは、本人が死した後もその人の中で生き続ける。これは死後の他者への直接的なかかわり方だが、ディキンスンはそれとは別に精神的なかかわり方を詩という文学を媒体として成し遂げている...