H20第二問情報リテラシーと知識格差

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    資料紹介

    【合格済み】東京大学大学院学際情報学府入試

    資料の原本内容

    H20第二問 情報リテラシーと知識格差

    (1)

     この膨大なデータ量の中心で、我々は従うべき忠実さや主張や基準を定めねばならない。何故ならば我々はもはやその選択にこれ以上の余地を残したくないからである。好奇心を導くためのアリアドネの糸なしに全ての物事にアクセスできるようになることは、我々を途方に暮れさせるだろう。
    (2)

     ウェブ検索により誰でも情報にアクセスすることが可能となるため、知識が一部の専門家にのみ占有されるという従来の状態から、誰でも知識を持つことができるようになる。このように知の平等化が進むと考えられている。

     しかし著者の意図に基づいて情報が選別されて並べられた書籍とは異なり、ウェブ検索によって手に入る情報は各々異なる文脈の中より拾い上げられてきたものである。このような情報を読み解き、必要な知識を探す際に、書籍に働いていた著者の意図の代わりに情報リテラシーや該当分野の知識が必要となる。情報リテラシーとは情報の探索、評価、利用の文脈、技術と操作の四つの要素から構成されるもので、大量の情報を扱うウェブ検索においてなくてはならない素養である。従ってリテラシーや知識を持つ集団はウェブ検索により大幅に広がった情報へのアクセス可能性の恩恵によってより多くの知を得ることができるが、持たない集団は得ることが出来ない。このようにウェブ検索により知の格差が増幅され、ますます不平等が拡大してゆくと考えられる。

     このような格差の拡大は既にマス・コミュニケーション研究において知識ギャップ理論として知られている。情報の受け手はその知識レベルに従って情報を受容するため、多くの情報をマスコミが供給すると知識格差は狭まるどころかますます広がってしまうという理論である。ウェブ検索は未だかつてないほど膨大な情報を扱うため、知識ギャップ理論で想定されているよりも大規模な格差拡大を生じ、知の不平等化をより一層進めると思われる。

    (648文字)

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