精神保健福祉の法制度の変遷と、それぞれの人権規定について
日本の精神保健福祉は、法制度と深く関係しながら歩んできた。近年では、人権擁護を柱とした法制度が改正されている。本稿では、各時代の法制度の中にどのように人権規定が盛り込まれてきたかを考察する。
私宅監禁の時代
明治初期にはしっかりした法制度はなく、加持祈祷が治療として行われていた。1900年に制定された「精神病者監護法」が精神障害者の保護に関する初の全国的規制となる。内実は私宅監禁と、家族による管理手続きを規定したもので、その後公布された「精神病院法」で法的には医療や保護の視点が芽生えたものの、現実には私宅監禁が継続していた。
医療と保護の時代
第二次世界大戦での敗戦は、日本に大きな変化をもたらした。日本国憲法の制定は人権尊重の気運を高め、国連採択の「世界人権宣言(1948年)」では、「すべての人は生まれながらにして自由であり、尊厳と権利とにおいて平等である」と謳われた。しかし、翌年の「身体障害者福祉法」では、精神障害者は制度の範囲外に置かれている。これは宣言の効力の限界でもあっただろう。
1950年の「精神衛生法」では、私宅監禁の廃止,都道府県への精神化病院設置を義務化等、精神障害者の...