本稿では、学校教育の「生徒理解」において生徒とどのような関係や働きかけが望ましいのか検討し、具体例を挙げながら説明したい。
まず生徒理解の意義とは、効果的な教育を行うために、その生徒の持っている個性や特徴、また能力を的確に把握することである。この生徒理解の目的は、教師が生徒に対し適切な教育を行うために情報収集をすることと、この結果を生徒伝えることで自己理解を深めるという二重の意味を持っている。
そこで、教師としてどのような心構えや態度が求められるか検討したい。具体的には、第一に教師は主観や思い込みを捨てること、第二に共感的な態度で接することである。なぜなら、生徒の特徴を正確に把握することが「生徒理解」のゴールとするならば、生徒の資質を多面的に捉え、公正なものの見方をする必要があるからである。
第一の主観や思い込みを捨てることとは、例えば、服装がだらしない生徒がいたとして、それを不良というカテゴリーに括って人格を否定してしまっては、実態を見誤るということである。そのような思い込みがあると、この生徒が親切心からクラスを盛り立ててくれようとしたのを、学級崩壊を促しているなどと教師は誤解する...