心理的特徴
A 高齢者心理の背景
老いが体験の外にあるということを謙虚に受け止め、一方的・画一的に高齢者の心理や行動を断定する誤りは避けなければならない。
老いの体験のない者は、高齢者の心理についての正しい知識を学ぶとともに、一人ひとりの高齢者に向き合うことから、高齢者の心理状態や感情のありようを学びとることが大切である。
1.時間的蓄積を理解する
高齢者は、長い過去をもっていることが第1の特徴である。100歳であれば100年、80歳であれば80年、看護する私たちの優に2倍から5倍もの長い長い過去の時間を身体に、また、言葉遣いに、習慣に刻み込んでいる存在なのである。そして過去の時間的蓄積が、現在の健康状態や生活習慣、価値観に深く反映されているのである。
顔面のしわ一つとつても、見事にその人の「歴史」を物語っている。過去を反映した高齢者の現在は非常に複雑かつ個性的であり、表面からだけでは推し量ることのできるものではない。高齢者を理解するためには、過去が理解されなくてはならない。ここでいう過去とは、個人の生活史であり、家族史であり、また社会の歴史でもある。
高齢者が長い過去をもっているとい...