地球環境時代に求められる産業界の役割

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    資料紹介

    序章
     1960年代頃より世界の環境問題が騒がれ、地球温暖化、資源・廃棄物問題等の環境・資源制約の必要性が益々高まる中で、いかに環境と経済を両立させ、持続可能な経済社会を構築するかが近年の課題となっている。近年、環境への取組を、企業競争力、ビジネス開拓の重要な要素と捉え、企業経営上において不可欠である収益性も加味した「持続可能な経営」、「環境と両立した経営」を実践する企業も多くなってきている。このような私企業による持続可能な「環境経営」を、我が国の経済社会システムに定着させていくことが、地球温暖化対策、廃棄物・リサイクル対策、化学物質管理対策等、日本が直面する環境問題を解決する上で重要な問題と言える。 
     ところで、日本がこの環境問題を意識し始めたきっかけは、1960年代におこった産業公害事件である。日本社会は第二次世界大戦に敗れた後、60年代にエネルギー革命と技術革新を経ながら所得倍増を達成し、急速な経済成長とともに復興した。しかし、その一方で工場排出される有害化学物質によって大気汚染や水質汚濁が生じ、多数の周辺住民に深刻な人身被害が発生したのである。全国に多くの被害者を出し、各地で公害訴訟が始まった。中でも新潟水俣病訴訟、四日市喘息訴訟、イタイイタイ病訴訟、熊本水俣病訴訟の四大公害訴訟は大きな公害裁判として注目を集めた。
     こうしたなかで全国的に反公害運動が盛り上がり、新規の工場立地が困難になるに及び、腰の重かった政府はやっと本格的な規制に動き出したのである。これが日本国における環境問題意識の始まりであり、国による「環境ガバナンス」の始まりといえよう。その後も公害問題はますます深刻化し、1970年には「公害国会」が開かれ、71年には「環境庁」が発足するのである。そして93年には環境基本法が制定され、それを基本としてあらゆる環境法が制定されていく。

    資料の原本内容

    地球環境時代に求められる産業界の役割
    目次
    序章・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
    第1章 環境ガバナンス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
     1,1 環境ガバナンスの定義
     1、2 日本の環境問題の推移と環境ガバナンス
     1、3 環境行政の対応としてのガバナンス
    1、4 地球環境問題の国際的合意の形成
     1,5 環境ガバナンスに対する産業界の対応
    第2章 環境政策の変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
     2、1 新たな施策の展開
     2、2 日本の法規制
     2、3 欧米の法規制
     2、4 環境と経済の両立
     2、5 産業界の自主性による取組み
    第3章 私企業における環境リスクマネジメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57
     3、1 環境リスクの認識と企業行動
     3、2 リスクマネジメントの特徴
    3、3 事業主にとってのリスク
     3、4 環境リスク評価の手法
    第4章 企業における環境経営の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65
     4、1 環境問題と経済発展
     4、2 ISO14001による環境経営
     4、3 発展途上国における環境経営
    第5章 企業の環境対策の事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72
    5、1 トヨタの環境対策
    5、2 松下電器産業株式会社の環境対策
     5、3 資生堂の環境対策
     
    結論 環境経営における企業の社会的役割と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82序章
    1960年代頃より世界の環境問題が騒がれ、地球温暖化、資源・廃棄物問題等の環境・資源制約の必要性が益々高まる中で、いかに環境と経済を両立させ、持続可能な経済社会を構築するかが近年の課題となっている。近年、環境への取組を、企業競争力、ビジネス開拓の重要な要素と捉え、企業経営上において不可欠である収益性も加味した「持続可能な経営」、「環境と両立した経営」を実践する企業も多くなってきている。このような私企業による持続可能な「環境経営」を、我が国の経済社会システムに定着させていくことが、地球温暖化対策、廃棄物・リサイクル対策、化学物質管理対策等、日本が直面する環境問題を解決する上で重要な問題と言える。 
    ところで、日本がこの環境問題を意識し始めたきっかけは、1960年代におこった産業公害事件である。日本社会は第二次世界大戦に敗れた後、60年代にエネルギー革命と技術革新を経ながら所得倍増を達成し、急速な経済成長とともに復興した。しかし、その一方で工場排出される有害化学物質によって大気汚染や水質汚濁が生じ、多数の周辺住民に深刻な人身被害が発生したのである。全国に多くの被害者を出し、各地で公害訴訟が始まった。中でも新潟水俣病訴訟、四日市喘息訴訟、イタイイタイ病訴訟、熊本水俣病訴訟の四大公害訴訟は大きな公害裁判として注目を集めた。
    こうしたなかで全国的に反公害運動が盛り上がり、新規の工場立地が困難になるに及び、腰の重かった政府はやっと本格的な規制に動き出したのである。これが日本国における環境問題意識の始まりであり、国による「環境ガバナンス」の始まりといえよう。その後も公害問題はますます深刻化し、1970年には「公害国会」が開かれ、71年には「環境庁」が発足するのである。そして93年には環境基本法が制定され、それを基本としてあらゆる環境法が制定されていく。
    しかし、近年における環境問題はより複雑化していて、国の行う従来の命令・統制型規制の概念では対処しきれなくなってきているという実情がある。むしろ、国の行う対策だけに留まらず、産業界の自主的取組みといった新たな環境政策へと変わってきているのである。企業は、かつては規制の対象であり、法的規制や反公害運動に対応して公害対策を行ってきたが、近年において産業界はただ法規制をクリアにするというだけはなく、積極的に対応して公害対策投資や公害防止技術開発を行う、といったように公害克服に向けて大きな役割を担っている。
    では、本論文では、今日までは法規制を中心に命令・統制型の色が強いとされていた環境政策はどのように変改し、また産業界においてはこの「環境ガバナンス」といわれる概念から環境問題への取り組みをどのように発展させ、そしてこれからの地球環境時代にはどのような重要な役割をもち、さらには何を求められていくのか、そして国と行政はそれをどのようにガバナンスしていくのか、に着目していく。
    論文の構成としては、全5章から構成され、第1章の「環境ガバナンス」ではガバナンスと定義から入り、その背景から国際的な枠組みや国、そして企業としてのガバナンスへと連鎖していく、その経緯を概観する。第2章の「環境政策の変遷」では、国の政策はどのように移り変わっていき、産業界はどのように対応していったかを、環境先進国といわれる欧米の政策と比較しながら明らかにする。第3章の「私企業における環境リスクマネジメント」では、企業はどのようにしてリスクを認識し、また回避する手立てを模索してきたか、及びそのリスクの評価基準となっているものは何かを概観する。第4章の「企業における環境経営の必要性」では、これまで法規制の対象であった企業が、規制の枠を超えてつくりあげてきた環境経営という概念が、地球規模における環境保全においてどのような役割をもち、またその背景と抱えている課題は何かを概観する。第5章の「企業の環境対策の事例」では、製造業である3社の企業の行っている環境対策の特徴を具体的に述べ、事例として取り上げる。結論では、ガバナンスの面から環境経営の面までを通して、環境保全におけるこれからの企業の社会的な役割と課題を述べる。
     
    第1章  環境ガバナンス
    本章では、ガバナンスとしての定義を述べ、国によるガバナンスから企業としてのガバナンスへとシフトした、環境問題に対する対応の変遷の過程を概観し、その背景とともに国としての行政によるガバナンス、またその基準となった国際的枠組み、さらに、それに伴って大きな役割を持つようになってきた産業界の対応を明らかにし、それぞれのガバナンスの変遷とその意義を述べる。
    1,1 環境ガバナンスの定義
     環境ガバナンスにおける定義はいくつかの解釈があると言われるが、本節では大きく分けて三つのカテゴリーによる解釈より、定義していく。
    (1) 地球環境ガバナンスと国際環境ガバナンス
    環境ガバナンスとは、社会が環境を管理する能力や仕組みのことであり、地球環境ガバナンスという場合は、地球社会が環境を管理する能力やその仕組みを意味し、国際環境ガバナンスという場合は、国際社会が環境を管理する能力やその仕組みを意味する。伝統的には、そのような能力や仕組みは、法制度を中心に形成されてきたが、グローバル化が進む今日、必ずしもそうとは限らならない現実が生じてきている。 環境ガバナンスの形態には、中央集権的社会における公的権威によるガバナンス、中心的権威の存在しない分権的社会におけるガバナンスがある。環境ガバナンスに関与する主体は、国家、政府、国際機関、地方自治体、市民、女性、先住民、若者、市民団体、企業、学会等があげられる。地球環境保全の実現を目標とし、制度を通じた各主体の積極的な関わり合いや交流によって環境ガバナンスは具現化する。(1)
    (2) 環境ガバナンスと環境政治
    「ガバナンス」(governance)とは、研究社刊『英和大辞典』によると、支配、統治、管理、支配力、統轄力、統治方式、管理法、管理組織などの訳語がある。したがって環境ガバナンスを直訳すれば「環境管理(法、組織)」、「環境統治(方式)」などということになろう。ただし、このような訳語では社会を構成する市民や企業などのメンバーが、国家と社会を構成する市民などの多様な主体がともにつくりあげていくよりよいマネジメント(管理)を意味するようになっているのである。
     一方、「政治」は政治学者の佐々木毅東大教授によれば、「自由人からなる一つの共同社会のなかでの公共的利益にかかわる権力をともなった多元的主体の活動」であるとし、政治は公的利益にかかわる活動であること、多元的主体がそれについて自己主張し、競争すること、そうしたなかで権力が正当性を獲得し、あるいは行使されることが含まれているとしている。この背景として人間が互いに協力しながら問題を処理していかなければならない存在であることを指摘している。つまり、「環境政治」とは「環境という公共的利益にかかわる、権力をともなった多元的主体の活動」ということになるのである。これをもう少し広げ、行政や意思決定過程、政策の実施プロセスなどをも含め、ものごとのやり方や取り組み姿勢、管理の仕方、ルールや仕組み全般などをも意味にこめると、「ガバナンス」の意味するところに非常に近くであろう。(2)
    (3) 「グローバル・ガバナンス委員会」の報告書によるガバナンスの定義
     [ガバナンスというのは、個人と機関、私と公とが、共通の問題に取り組む多くの方法の集まりである。相反する、あるいは多様な利害関係の調整をしたり、協力的な行動をとる継続的プロセスのことである。承認を強いる権限を与えられた公的機関や制度に加えて、人々や機関が同意する。あるいはみずからの利益にかなうと認識するような、非公式の申し合わせもそこには含まれる。・・・・・・・
    現代の慣行では、...

    コメント18件

    asyd220 購入
    参考になる。
    2006/05/05 10:56 (18年7ヶ月前)

    tom420 購入
    読み応えがあります
    2006/05/31 13:47 (18年7ヶ月前)

    mayaya 購入
    作者の心意気が素晴らしい
    2006/06/07 8:21 (18年6ヶ月前)

    skylinemove 購入
    yoi
    2006/06/26 15:06 (18年6ヶ月前)

    chifuhua 購入
    参考になると思う
    2006/06/27 14:13 (18年6ヶ月前)

    alejandro228 購入
    非常に参考になると思う。
    2006/07/31 0:06 (18年5ヶ月前)

    toshifumi 購入
    良く調べられており、参考になります。
    2006/08/28 8:44 (18年4ヶ月前)

    aa0709 購入
    一連の流れが把握しやすくて、参考になります。
    2006/09/05 16:37 (18年3ヶ月前)

    kyougo 購入
    良くできていてとても参考になります。ボリュームも十分です。
    2006/09/29 15:41 (18年3ヶ月前)

    leehikaru 購入
    非常に参考になると思う。
    2006/10/17 8:42 (18年2ヶ月前)

    a4103167 購入
    素晴らしい★
    2006/11/20 20:45 (18年1ヶ月前)

    sophisticate 購入
    素晴らしいです!
    2006/12/04 23:46 (18年前)

    dridri 購入
    読みごたえもあって参考になる!!
    2006/12/06 15:17 (18年前)

    tiger1112 購入
    とても参考になります!
    2006/12/20 21:51 (18年前)

    bld1362 購入
    -
    2006/12/21 14:26 (18年前)

    basaro 購入
    2007/04/10 21:57 (17年8ヶ月前)

    nietzsche 購入
    素晴らしいです。参考になりました。
    2007/07/31 6:16 (17年5ヶ月前)

    hideaking 販売
    結構な冊数になり為、読み応えがあると思います。
    環境問題に関する内容は一通り網羅したつもりですが、一番詳しく書いたのが
    環境ガバナンスについてです。

    今後、環境問題に興味を持つ後輩たちに、ぜひ参考にして頂ければと思います。
    2009/03/24 9:34 (15年9ヶ月前)

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