平安時代後期仏教の特質を論ぜよ
1)源信浄土教
平安時代に広まった仏教は浄土教であり、その隆盛は十世紀にひとつのピークを迎える。民間布教に邁進し「市聖」と呼ばれた空也と、天台浄土教の教学と実践を総合的かつ体系的にまとめ上げた源信によって、阿弥陀如来の名を口に称える口称、阿弥陀や極楽のさまを心に想念する観想を問わず、念仏による極楽往生を願う人々がこの時期爆発的に増えた。
特に、比叡山で天台教学を学んだ源信は、念仏による救いを模索する同信同行の人々のために、正しい念仏のあり方を説き明かそうと『往生要集』を執筆した。これは、序文のあと、大文第一厭離穢土、第二欣求浄土、第三極楽の証拠、第四正修念仏、第五助念の方法、第六別時念仏、第七念仏の利益、第八念仏の証拠、第九、往生の諸行、第十問答料簡という、整然とした構成をとっている。源信によると正しく念仏を修することは「上求菩提、下化衆生」の大乗菩薩道実践の精神の発露であり、源信浄土教が単なる事故往生の希求ではなく「一切衆生みなともに仏道を成せん」という利他行実践にほかならなかったことを示している。
この『往生要集』の念仏観は、あくまで観想が主で、称...