日大 通信 商業史分冊1(幕藩制社会において商業の不可欠な理由、17世紀と19世紀における江戸市場の相違、幕末の金貨流出のしくみと防止策)

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     幕藩制社会とは、将軍を頂点として、大名・旗本・家臣などの幕藩領主階級が全国の土地を領有し、その下に農・工・商とはっきりと区別された庶民を、強大な軍事力をもって支配するというしくみをもった社会である。このような身分的分化は、当然に生産における分業関係の成立を意味する。ここではまず、幕藩制社会において商業の不可欠な理由を述べる。
     被支配階級の中心をなす農民は検地によって耕地保有を認められ、基本的には家族労働による自立経営を営むことができるようになったが、刀狩りによって武器をとりあげられて武士階級に上昇することが阻止され、さらに農村での商業禁止、城下町への移住の禁止によって商工業者は、武士階級の消費需要に応じるために城下町に集められた。一方、武士階級も検地によって、また、地方知行制の廃止、部俸禄制への移行によって、在地性を否定され、家臣団として城下町に居住するようになった。武士は物的生産を行わなかったから、生活に必要な物資を農民・手工業者から調達する必要があった。また、商工業者は食料品をはじめ農作物を生産しないから、これを購入する必要があった。農民は農業のかたわら手工業製品を生産し、基本...

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