『源氏物語』の「桐壺」に見られる内裏・
後宮のかかわりについて
1.はじめに
平安時代の後宮の発展により、ここに住む女性達によって作り出された女流文学も洗練され、一層リアルに近づいたものとなった。
その中でもあまりにも有名な『源氏物語』では、内裏・後宮はどのように描かれただろうか。
冒頭は、
いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶさひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。
から始まることからもわかるように、女御、
更衣が多く宮廷に仕えた時代の物語である。
また皇后という存在がここに記されていない
ことから、この時点で後宮では皇后の座を狙
った争いが渦巻いていることが伺える。
最強権威の社会である宮廷・後宮が、舞台
である事を示しているのである。
こうして「いとやむごとなき際にはあらぬ」
(身分にふさわしくない)帝の寵愛を受けて
いた桐壺の紹介がされ、この物語の幕は開く。
この作品の序幕とも言える「桐壺」の巻で内裏・後宮はどのように関わっているか、いくつかの例を挙げてみたい。
2.「え避...