ロマン主義の幻想的な文学作品と、写実主義あるいは自然主義的な文学作品のどちらに惹かれるかといえば、私の場合はロマン主義の幻想的な作品である。
どちらにも惹かれるのが正直なところであるが、ロマン主義の「女性」の捉え方が非常に美しい点に私は興味を抱いた。
ゴーチエの『死霊の恋』では、主人公ロシュアルドは初めて会った遊女クラリモンドをこう述べている。
~七色の虹をまとい、太陽を見つめたと きのように、赤い後光につつまれて、睫毛の裏に光り輝くのが見えた~(一一頁)
まさに女神そのものを連想させる。また、彼女の眼に関しては、
ただ一瞥で、男の運命を決めてしまう眼、
今までどんな人にも見たことのない、活
力と、さわやかさと、熱気と、つやつや
したうるおいをもった眼(一二頁)
と表現している。画家を目指していたゴーチエだけに、まさに読んでいて絵画を思わせる箇所がいくつもある。美術館巡りが趣味の私としては、ゴーチエの物語は素敵な美術品を鑑賞しているような気持ちになれて心地良いのである。
そして絶世の美女クラリモンドが、吸血鬼であるという点にも興...