可憐、清らか、しとやか、そして艶やか。日本女性美の名詞をすべて凝縮した、舞踊の大作と言ったら『京鹿子娘道成寺』(一七五三)であろう。この作品には、着物を着た時にお手本にしたい美しい動作が多々含まれており、歌舞伎好きではなくとも、女性として生まれたからには是非見ておきたい作品とも言える。
この『京鹿子娘道成寺』は、安珍に恋をした清姫が、嫉妬に狂い鐘の中に逃げた安珍を焼き殺す、という『大日本国法華経験記』(一〇四〇〜一〇四四)にも記された「安珍清姫の物語」の伝説の一部を、歌舞伎化したものである。もともとは能の作品として先に舞台化されたものであり、歌舞伎の作品の中にも能の一部が取り入れられている。
今回私が鑑賞した『京鹿子娘道成寺』は、二人で舞う「道成寺もの」として、平成十六年一月(二〇〇四)に五代目坂東玉三郎・五代目尾上菊之助の二人の白拍子花子の艶やかな競演が大きな評判を呼び、再演となったものである。
前述のごとく「道成寺もの」は能から始まり、絵画の『道成寺縁起絵巻』(一三九四〜一四二七)、歌舞伎では文楽人形のように舞う『日高川入相花王』(一七五九)などもありその他にも様々なバリエーションがある。その中で初代中村富十郎(一七二一〜一七八六)が宝暦三年(一七五三)に『京鹿子娘道成寺』を初演し、大ヒットとなった為「道成寺」ものといえばこの『京鹿子娘道成寺』と言われる所以となった。
一人で舞っても充分優美なこの作品を、女方といえば「この世のものとは思えない美しさ」と言われる玉三郎に、お人形さんのような美しさの菊之助の二人で花子を演じるとは、なんとも贅沢な演出である。
舞台は、道行から始まり乱拍子、中啓の舞、手踊り、鞠唄、花笠、くどき、山づくし、手踊り、鈴太鼓、そして鐘入りで終わる。恋をする女性の様々な心情を、あらゆる曲調に合わせて二人の花子が踊り分けてゆく。
可憐、清らか、しとやか、そして艶やか。日本女性美の名詞をすべて凝縮した、舞踊の大作と言ったら『京鹿子娘道成寺』(一七五三)であろう。この作品には、着物を着た時にお手本にしたい美しい動作が多々含まれており、歌舞伎好きではなくとも、女性として生まれたからには是非見ておきたい作品とも言える。
この『京鹿子娘道成寺』は、安珍に恋をした清姫が、嫉妬に狂い鐘の中に逃げた安珍を焼き殺す、という『大日本国法華経験記』(一〇四〇~一〇四四)にも記された「安珍清姫の物語」の伝説の一部を、歌舞伎化したものである。もともとは能の作品として先に舞台化されたものであり、歌舞伎の作品の中にも能の一部が取り入れられている。
今回私が鑑賞した『京鹿子娘道成寺』は、二人で舞う「道成寺もの」として、平成十六年一月(二〇〇四)に五代目坂東玉三郎・五代目尾上菊之助の二人の白拍子花子の艶やかな競演が大きな評判を呼び、再演となったものである。
前述のごとく「道成寺もの」は能から始まり、絵画の『道成寺縁起絵巻』(一三九四~一四二七)、歌舞伎では文楽人形のように舞う『日高川入相花王』(一七五九)などもありその他にも様々なバリエー...