通貨取引税の正当性についての一考察
当初、通貨取引税がトービン博士によって提案された時、その意図は通貨価値の安定であり、税収についてはあまり興味を持たれなかった。だが、近年トービン税に注目が集まっている意図はその税収を発展途上国の援助に当てることにあり、国家のコントロールを超えた大量の短期資本移動による通貨不安の阻止はあまり重要視されていないように思える。
なぜなら、世界に存在する格差や貧困問題など人類が抱える悲劇的な問題の多くは金銭で解決が出来るものが多いが、トービン税が想定した「通貨安定」の当初の目的を達成するために通貨取引の抑制を重視する立場として、税率を高額に設定した場合、目的が達成されれば税収は無くなり、通貨危機の可能性がなくなる一方で、途上国への資金援助はできなくなるということになる。そのため税収面に注目する立場からは安定税源として継続した税収が望ましく、通貨取引を微減にとどめる程度の低い税率での設定が必要になり、近年はそのような低い税率でのトービン税についての議論が高まっている。
たしかに通貨取引量の増大により一国の通貨価値が乱高下し、その国家の国民が被害を蒙ることはある...