1.音声変化
音声変化によって生ずる結果には、合流的展化、分岐的展化、音の脱落がある。合流的展化はもともと異なっていた2つの音が後の時代になって同一音で表わされるようになることである。例えば、中世英語で[ε:][e:]の発音は近世英語の南部方言でともに[ij]に長母音化し、また、中世英語でoiの綴りは[oi][ui]を表わしていたが、[oi]はjoy, choiceの'oy','oi'部分の発音のように、[ui]もpoison, jointの'oi'部分の発音のように変化した。分岐的展化は、もともと1つであった音が様々な条件によって後の時代では2個あるいはそれ以上の音に分かれる。例えば、古代英語の[¨u]は現代英語ではn, lの前では[i]へと変化する。また、中世英語の~aは現代英語ではnameのように[ei]と変化した。音の脱落は、ある特別の母音または子音がある特別の状況下では他の音に変化せず、またそのまま変化せずにとどまることもなく全く喪失してしまう。例えば、古代英語でr, nの生ずるhはhringan→ringen、hnutu→nuteのように脱落した。近代英語では多くの子音が消失した。rは子音の前や語尾では消失し(例:arm)、フランス語の借用語で強勢をうけない時は頭語のhは消失した(例:hour)。同様に頭語のk, gにnが続いた時も消失した(例:knight)。
以上のような三種類の変化が直ちに文法形式の単純化につながるわけではない。特に、分岐的展化は上述したように単なる子音の影響を受けて変化する以外に、名詞・形容詞の変化あるいは活用による変化を複雑にする場合がある。現代英語のleadとledの母音は古代英語ではもともと同一音であったが、現在形と過去形の区別に不便であるために現代では異なる母音となった。また、古代英語の名詞は主格、目的格、属格、与格と格によって変化したので、単複で計八種類になり単複同形になる格も多数であったため(例:現代英語のlandの主格は単複同形)、区別が難しくなり語形変化(音声変化)した。
1.音声変化
音声変化によって生ずる結果には、合流的展化、分岐的展化、音の脱落がある。合流的展化はもともと異なっていた2つの音が後の時代になって同一音で表わされるようになることである。例えば、中世英語で[ε:][e:]の発音は近世英語の南部方言でともに[ij]に長母音化し、また、中世英語でoiの綴りは[oi][ui]を表わしていたが、[oi]はjoy, choiceの'oy','oi'部分の発音のように、[ui]もpoison, jointの'oi'部分の発音のように変化した。分岐的展化は、もともと1つであった音が様々な条件によって後の時代では2個あるいはそれ以上の音に分かれる。例えば、古代英語の[¨u]は現代英語ではn, lの前では[i]へと変化する。また、中世英語の~aは現代英語ではnameのように[ei]と変化した。音の脱落は、ある特別の母音または子音がある特別の状況下では他の音に変化せず、またそのまま変化せずにとどまることもなく全く喪失してしまう。例えば、古代英語でr, nの生ずるhはhringan→ringen、hnutu→nuteのように脱落した。近代英語では多くの子音が...