小説ノート26

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    わたくし率イン歯―、または世界 2008年04月15日 川上 未映子 お母さんの世界には、体を持ち、同時にそこに意識を持った人たちが数え切れないほどいて、その誰にも他人と自分を間違えようのない、私、としか名づけようのない、なにか中心のようなものがあって、そこからそれぞれの世界を開いているのですよ。お母さんにもそれがあって、なんで、お母さんの私はお母さんのここに、この体に、このように一致してしまっているのかしらねえ。 でも、それが間違っているだなんて、誰にもいえないことなのです。人が大事にしてる考えやものについては、ただしいもおかしいもないのです。 それがきっと、それがきっと、雪国のあのはじまりの、わたくし率が、限りなく無いに近づいて同時に宇宙に膨らんでゆくこのことじたい、愉快も不快もないこれじたい、青木がわたしに教えてくれた、何の主語のない場所、それがそれじたいであるだけでいい世界、それじたいでしかない世界、純粋経験、思うものが思うもの、思うゆえに思うがあって、私もわたしもおらん一瞬だけのこの世界、思う、それ 子ども子どもと云いながら・あなたが欲しがってるものは・ほんまのところ何ですか...

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