変形性膝関節症

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平成22年4月13日
高森俊恵
変形性膝関節症
1.特徴
  ・変形性関節症のうち最も膝が多い。
  ・内側に強い変化があらわれるものが多い。
  ・関節に生じた退行変性。
  ・X-P的には、関節裂隙が狭小化あるいは消失し、その周囲の骨硬化像や骨棘形成を見る。
  ・一次性と二次性に分けられる。
  ・進行度の程度により、6つのgradeに分類される。
2.片脚立位膝X線像による分類(腰野による)
  grade0:正常
  grade1:骨硬化像または骨棘
  grade2:関節裂隙の狭小化(3mm未満)
  grade3:関節裂隙の閉鎖または亜脱臼
  grade4:荷重面の摩耗または欠損(5mm未満)
  grade5:荷重面の摩耗または欠損(5mm以上)
  
初期:grade1  中期:grade2・3  末期:grade4・5
 *亜脱臼:立位正面X線像で脛骨関節面内側端が大腿関節面内側端より5mm以上外側へ偏位しているものをいう(ただし骨棘は除外する)
3.症状
  ・関節液の貯留
  ・運動制限
  ・運動痛
  ・多くはO脚の傾向となる⇒内側関節裂隙に圧痛(+)
 1)初期
   潜行的に発症し、関節の硬直感がある。
 2)疼痛
   間歇的な痛みで、安静の後使いはじめに疼痛を覚え(starting pain)、運動によって軽減し、運動が長びけば漸次疼痛が増強してくる。また休息、安静により疼痛が消失するものが多い。OAにおける痛みは、突出変形した骨棘と炎症滑膜、関節周囲の筋・腱・靭帯の異常緊張などによるものと考えられる。
 3)運動制限
   進行した例では、疼痛による筋緊張、関節軟部組織の肥厚と拘縮、関節面の変形などにより、関節の運動が制限される。関節運動に際して、しばしばきつ轢音が聞かれる。
 4)変形
   皮膚に近い関節では、関節面の変形が強くなるにつれ、外見上太く短い形を呈し、荷重関節では内・外反変形をも伴うようになる。
 5)関節液貯留
   膝関節では関節液の貯留をみることがしばしばあり、量も多い。
4.X線像
  ・関節裂隙の狭小化
  ・骨棘の形成
  ・硬化像
5.治療
1)保存療法
 基本は安静と保温である。これに加えて薬物療法、物理療法、運動療法、装具療法等のアプローチを行う。またADL指導も重要である。
 (1)薬物療法
  非ステロイド剤の経口投与が一般的。関節炎症症状が高度で関節水腫が見られる場合には、ステロイド剤の関節注入が著明な効果を奏する。しかし薬物療法の効果はあくまでも一時的なものであり、運動療法等と併用して用いることが重要である。
 (2)物理療法
  疼痛・炎症の鎮痛、軟部組織の柔軟性維持・改善などの目的で行う。
 (3)運動療法
  ・膝関節のROM-ex(パテラも忘れずに)
・筋力増強(大腿四頭筋)を中心に
⇒自転車エルゴメーター、水中歩行も有用(荷重がかからないため、膝関節に加わる負担は小さくなる⇒歩行時痛のある患者に有用)。
 (4)装具療法
  ・外側楔付き足底板
   膝の外側動揺性を防止し、膝の安定性を得る。
   ⇒膝内側への異常なストレスを除き、また異常な側方動揺によって生じる膝痛を防御するが、内反変形を矯正することはできない。
  ・膝装具
   安定性の獲得、膝伸展位の保持、屈曲拘縮除去の目的で用いられる。また保温も得られる。
 (5)ADL指導
    ・体重を減らす。
    ・和式生活を避ける。
     ⇒洋式生活のすすめ(正座・あぐらはしない、和式トイレは避ける)
    ・重いものを持って長距離歩行をしない。
    ・階段はなるべく使用しない。
    ・冷やさない。
 2)観血的治療
 (1)手術適応条件
    ・強い変形が認められるもの。
    ・膝痛強:膝関節裂隙が3mm以下になると訴えが多くなることが多い。
    ・片脚立位X線正面像においてFTAが180°以上。
    ・JOAが60点以下。
    ・適応年齢:55~60歳
 (2)高位脛骨骨切り術
 (3)人工膝関節全置換術
   ・求められる機能
①安定・支持性:人工膝関節の安定性は、ⅰ)人工関節自体 ⅱ)膝関節周囲軟部組   織(関節包、靭帯など)の2つに分けられる。
    ②可動性:正常な膝は複雑な動きを持ち、多軸性である。
   ・手術目的
     ①除痛
     ②支持性獲得
     ③可動性獲得
   ・手術ポイント
①下肢アライメントの異常を戻すこと
⇒ FTA、拘縮など
     ②骨欠損に対して、骨移植を実施
⇒その際、練習プログラムの変更の有無に気をつける。
6.術後療法プログラム
 1)浮腫や循環障害に対するパンピング練習
 2)早期のROM-ex
  ドレーン抜管後、直ちにCPM練習を開始。術後膝関節伸展制限を残すと荷重位での支持性の低下を招来さるばかりでなく、膝関節の負荷が増し、変形の再来や人工関節置換術であればLooseningの原因になるので留意する。
 3)早期の筋力増強
  特に大腿四頭筋の等尺性運動は今後の回復過程に大きく関わってくるので、術後より十分に実施する。
   ⇒疼痛や浮腫の度合いを考慮し、種類、手法を決定する。
 4)荷重時期の確認(骨移植の有無、セメント使用の有無)
   ⇒荷重練習、荷重歩行練習、適切な杖の使用、歩容の指導など。
 5)ADL指導
   洋式生活の指導、自主練習指導、免荷の指導(体重コントロール、杖使用)、
6)定期検査の指導
   膝関節は解剖学的に中間に位置するため、荷重位では身体近位部の状態と足部の状態に深く関わる。そのため理学療法は身体近位部(特に股関節周囲筋の筋力増強および足底挿板やテーピングなどの足部のコントロールが必要であり、荷重位でのアライメントの調整が重要である。また不安定性が残存する症例には、サポーターや膝装具などが必要となる。
7.理学療法評価項目
 1)ROM-T
 2)MMT
 3)JOA⇒疼痛、FTA、周径、下肢長、動揺、歩行距離、速度
 4)ADL
 必要に応じて、感覚検査など
8.参考文献
 1)東博彦 他:整形外科サブノート、南江堂、2001年
 2)片田重彦 他:整形外科手術後療法ハンドブック、南江堂、2001年
 3)細田多恵:理学療法ハンドブック第1・2・3巻、協同医書出版社、2001年
4)中村隆一:基礎運動学、医歯薬出版株式会社、2001年
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