頚椎後縦靭帯骨化症
【概念】
後縦靭帯骨化症とは、脊椎椎体の後縁を上下に連結し、脊柱を縦走する後縦靭帯が骨化することより、脊柱管狭搾をきたし、脊髄または神経根が圧迫されて神経障害を引き起こす疾患である。頚椎に最も多く発生する。靱帯が骨化する脊椎レベルによって頚椎後縦靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症、腰椎後縦靭帯骨化症と呼ぶ。治療の難治性から、1975年厚生省特定疾患に指定され研究が継続されている。40歳以上に好発、男女比は2:1。
【病因・病理】
原因は現在のところ不明である。全身的骨化素因、局所の力学的要因、炎症、カルシウム代謝異常、ホルモン異常、糖尿病、遺伝子異常、慢性外傷、椎間板ヘルニアなどがあげられている。
病態生理は、後縦靭帯が肥厚して、脊柱管内に突出する。靭帯内の線維軟骨が石灰化する。靱帯骨化の発生機序は明らかでないが、後縦靭帯内に線維軟骨の増生を基盤にして、石灰化や骨化の出現とともに、その肥厚が起こると考えられる。黄色靭帯骨化症や前縦靭帯骨化症、棘間・棘上靱帯など他の脊柱靱帯骨化や、四肢大関節周辺の靱帯骨化が合併することがある。骨盤には仙棘・仙結節・腰椎靱帯などが定型的に骨化しやすい。
【臨床症状】
頚椎OPLLの初発症状は、項頸部痛・しびれ、手指のしびれ、次第に上肢の疼痛やしびれの範囲が広がり、下肢のしびれや知覚障害、運動障害、手指巧緻動作が困難になる。しびれや知覚障害は手指足趾など四肢の先端から始まり、中枢側へ上行することが多い。
【身体所見】
知覚障害は四肢末端で低下し、手袋靴下型である。進行すると全身に及ぶ。筋力低下腱反射は上腕二・三頭筋が亢進する場合が多い。膝蓋腱・アキレス腱反射は亢進する。病的反射はバビンスキ-、チャドック、ホフマン、トレムナー、ワルテンベルグなどで陽性
参考文献
監修 国分正一、鳥巣岳彦:標準整形外科学、第10版2刷、医学書院 2008年