上代、中古、中世、近世の文学の特質を、それぞれの時代の特性をふまえつつ、下記の諸作品を例にして具体的に説明せよ。(古事記・万葉集・古今集・女流日記・源氏物語・平家物語・徒然草・近世小説)
上代の文学
上代の文学、特に初期のころの文学の特色は、口承文学の文字化という一点に集約される。
古代にはすでに漢字が輸入されていたが、本格的に使われるようになったのは、遣唐使熱が高まり唐との文化交流が盛んになったころからである。それまでのわが国の文学は口伝が主で、記録されることは多くなかったが、漢字の普及によって徐々に様々な伝承や出来事、詩歌などが筆録されるようになった。その中で生まれてきたのが、『古事記』『日本書紀』『万葉集』などである。
このうちの『古事記』は七一二年に成立したわが国の現存最古の文学的史書である。内容は神代から推古天皇の時代までを描いており、神話的、文学的色彩が色濃い。序文は漢文だが、本文はほとんど漢字の音読みと訓読みが入り乱れた変体漢文で、人名や和歌は当て字の万葉仮名で書かれている。
また『万葉集』は言わずと知れた日本最初の本格的歌集で七六〇年ごろに成立したと考えられている。記...