【環境社会学レポート】
ツシマヤマネコの環境の適応について
今回は、日本に生息するツシマヤマネコとそれを取り囲む環境について調べた。
・ ツシマヤマネコとは
・ ツシマヤマネコを取り巻く環境
・ ツシマヤマネコが減少した原因
・ ツシマヤマネコと人間が共存していく為の環境とは
環境社会学レポート
ツシマヤマネコの環境の適応について
今回は、日本に生息するツシマヤマネコとそれを取り囲む環境について調べた。
・ ツシマヤマネコとは
ツシマヤマネコとは日本の対馬に生息するネコ科の動物である。絶滅の恐れが高い
絶滅危惧種IA類に指定されている。
私が博物館でツシマヤマネコの剥製を見てまず感じたのは、キジトラ模様のイエネ
コと似ているということだ。見た目は一般的に見かけるイエネコとほぼ同じで、体
の斑点、額の黒白の縦縞、耳の後ろの白い斑点が特徴的だそうだが、実際にイエネ
コとツシマヤマネコの写真を並べて見比べないとハッキリ分かりにくかった。帰宅
後、インターネットの画像検索を利用し写真を数点並べて見比べて見た。すると、
イエネコとツシマヤマネコの模様の入り方、斑点の濃さの違いがよく分かった。イ
エネコは柄がハッキリ出ているものが多いが、ツシマヤマネコの斑点はぼやけてい
る。耳もイエネコのそれより確かに少し小さく、丸みがかかっている。 また、剥製
でも写真でも印象的だったのが、太い尻尾だ。尻尾だけはイエネコの倍以上の太さ
があった。個体差もあるかと思い何点かの写真を見たが、やはりどの固体も太くて
長い尻尾を持っていた。調べてみると、この太い尾もツシマヤマネコの特徴の一つ
だそうだ。
専門家は体の模様や耳の形、糞で見分けを付けられるようだが、一般人には一瞬で
イエネコと見分けるのは難しいだろう。イエネコと見分ける一番のポイントである
という耳の後ろの白い斑点は、剥製や写真など動かないものをジックリ見れば分か
ったが、実際に動いている対象を見て、瞬時に見分けが付けられるかといったら疑
問だ。目撃情報に誤りがあるのも納得できる。
日本に生息するヤマネコはこのツシマヤマネコとイリオモテヤマネコの2種類で、古
くから知られている。かつては対馬でよく見られていたが、現在では生息数が減少
している。地元でもツシマヤマネコを見たことがない人が増えていることから、頭
数が大幅に減少していることが伺える。現在の生息数は100頭もいないといわれてお
り、冒頭でも述べたように絶滅危惧種、並びに国の天然記念物に指定されている。
・ ツシマヤマネコを取り巻く環境
対馬は島のほとんどが山林だったため様々な動物が生息しており、狩猟の場として
も大変人気があったという。しかし、高度経済成長期を迎える頃には動物たちは乱
獲されて数が減り、獲物を獲りづらくなったことで対馬に訪れる人の数も減少して
いった。その後、山林は伐採されて人工林に変化し、それによってツシマヤマネコ
の餌となる小動物が軒並み減少したと考えられる。
上記の内容を見た後にツシマヤマネコに環境適応能力が備わっているかと聞かれれ
ば、大抵の人はノーと答えるのではないだろうか。しかし、本当にツシマヤマネコ
には環境適応能力が無いのだろうか。
対馬は九州と朝鮮半島の間に位置する島で、両国に近いせいか動物の生息が極めて
特殊になっている。両国に存在する種、朝鮮半島のみに存在する種、そして日本に
のみ存在する種が上手く組み合わさった島だ。日本に位置する島、しかし生態系は
違う。なんとも変わった場所である。生息している動物は多様ではあるが、なんと
大型の哺乳類が存在しない。そういった中でツシマヤマネコは肉食動物の中で生態
系の頂点として君臨していたのである。人間が対馬に住むようになってからは生態
系が変化し、人間がツシマヤマネコを捕って食べることもあったそうだ。しかし、
人間が耕した畑に寄ってくる害獣、ネズミや鳥をツシマヤマネコが餌にしていたの
で、良い具合に人間とツシマヤマネコは共存していたのではないかと私は考えた。
・ ツシマヤマネコが減少した原因
1960年代ごろからツシマヤマネコの数が減少していることが確認されている。
考えられる原因として
1 耕地の減少による生息環境の減少
2 車・バイクに轢かれる、衝突といった交通事故
3 古くから使われている罠にかかる
4 他の動物によって襲われる
5 病気の感染
が挙げられる。
もしかしたら他の原因も存在するかもしれない。だが、上記の原因はツシマヤマネ
コの生息数を減らす原因としては十分な原因ではないだろうか。
日本が高度経済成長に差し掛かり、その影響は対馬にも及んだ。水上交通の発達、
そして食物が簡単に手に入るようになり、農業や狩猟をする人も減ってしまった。
自給自足だった生活は終わり、捨てられた耕作地は管理者を失った。そうして荒れ
果てた土地が増加。一度人間の手が入れられ捨てられた土地には動物たちの餌にな
るような植物が少なく、島に住む野生動物たちにとって過ごし辛い環境となったの
である。
次に起こったことは何かというと、島内の交通整備である。道路が作られ、車が増
えた。当然のことだが、車道が危険だということは野生動物には伝わることがな
く、飛び出してきて轢かれるといった事故が相次いで起こった。ツシマヤマネコが
子育てをしている時期の10?`11月は特に交通事故が多く、事故にあって死んだツシ
マヤマネコの中には子供を身ごもっていたものもいたという。事故に遭っているの
はツシマヤマネコだけではない。テンやイタチも被害に遭っている。人間が作った
ものが、島の野生動物たちの脅威になっているのだ。
今までは新しく入ってきた物事による被害を述べた。それ以外にも、古くから使わ
れているある物によってもツシマヤマネコの頭数が減少しているのだ。ある物と
は、「とらばさみ」という脚を挟むタイプの人間が作った罠である。対馬では鶏を
飼っている住民が多く、鶏が野生動物に襲われないようにするために罠を使ってい
るのだ。罠には色々な種類の物が存在するが、中でもとらばさみは危険なものだと
いう。非常に強力で、鳥獣保護法によって使用が制限されているほどだ。とらばさ
みによって脚を挟まれた動物はすぐに治療しないと脚を切断せざるおえない状態に
陥ってしまい、場合によっては命を落とすケースさえもある。
また、対馬に生息している動物の生態系も変化しているということを忘れてはなら
ない要素だろう。人間が島に連れてきた犬やイエネコが色々な理由で野生化し、そ
れらの動物が島に住んでいた野生動物たちに影響を及ぼしている。ツシマヤマネコ
は、そういった犬やイエネコたちに餌場を奪われ、時には噛み付かれることもある
ようだ。
人間が島に持ち込んだ動物以外だと、元々対馬に生息していたテンが生態系に影響
を与え、問題視されている。以前は人間に狩猟されていたテンだが、ツシマヤマネ
コと同時期に天然記念物に指定され、人間から捕獲されることがなくなった。テン
は小動物だけでなく植物も餌にしているため、食べ物に困らず爆発的に増えた。ツ
シマヤマネコは小動物しか食べられない為、テンと同じ餌を取り合う状況になって
しまっているのだ。強さに順位をつけるとツシマヤマネコが一番で次にテン、イタ
チとなるが、素早さでは逆の順位になる。強くても餌の奪い合いに絶対勝てるとい
うわけではないのだ。餌自体が減っている中、素早さでテンに劣るツシマヤマネコ
が、餌を必ず確保できる可能性は高くはないだろう。
そして、どのような動物にもつきものの病気。ツシマヤマネコにとって危険な病気
はネコエイズウイルス(FIV)である。本来ツシマヤマネコはネコエイズウイルス
を保菌していなかったが、人間が連れてきたイエネコから感染が広がっている。野
生化したイエネコと喧嘩等で感染してしまったのだろうか。ネコエイズウイルス
は、喧嘩による出血や性交から感染し、感染している母猫から産まれた子猫が感染
している場合もあるようだ。
ツシマヤマネコは生息数が少ないので同じ相手と子供を作る確立が高くなってしま
っている、という事も危ぶまれている。人間にもいえることだが、血縁関係がある
中で繁殖していくと血が濃くなりすぎ、虚弱や奇形の個体が生まれるのである。最
早100頭あまりしか居ないツシマヤマネコにとって、重要な問題だ。
・ ツシマヤマネコと人間が共存していく為の環境とは
人間に対して良い環境、ツシマヤマネコに対して良い環境、どちらに対しても良い
環境を作っていきたい。ツシマヤマネコに関わっている誰もが考えることだろう。
これは、便利な暮らしと環境保全といった、数多くの場所で議論されている問題と
して言い換えられる。どのようにしてこの問題を解決するか、ツシマヤマネコの減
少を減らし、尚且つ人々にも良い提案を考えてみた。
まず、1の耕地の減少による生息地の問題。
以前のように耕作をする必要がある。対馬の人口が少ない中で耕作を行うことは大
変だが、ツシマヤマネコの生息数減少を呼びかけて興味を持った人に手を貸しても
らう。近年の日本は農業ブームになってきているので全国に呼びかければ人が集ま
るかもしれない。しかし、大規模に耕作を行うとあまりにも早く環境が変わってし
まうため、最初は小規模の耕作から始めていくのが良いだろう。
次に2に該当する交通事故の問題。
ツシマヤマネコやその他の野生動物だけでなく、車などを運転しているドライバー
にも危険を及ぼす問題である。道路自体を整備改変していくのは多大な予算と人が
必要になるため、獣道の建造や、道路付近に近寄らないように野生動物たちが嫌う
臭いを出す器具を設置するのもいいかもしれない。これらは海外の国立公園などで
取り入れられている。
3のとらばさみについては、いくら利用が制限されたといっても、大切な鶏が襲わ
れるかもし...