『宇治拾遺物語』の中から四話と、一一四話を取り上げて論じてみたい。両話はともに、伴善男に関連するものである。四話では、伴善男が、佐渡国の郡司の従者だったとき、東大寺と西大寺に足を置き、またぎ立つ夢を見、それを妻や郡司に話すと、郡司は良い夢だったが、妻に話したのが過ちである。出世はするが、罪を被り失脚するだろう。という予言をし、伴善男は大納言まで上り詰めるが、やはり罪を被ってしまうので、郡司の言葉に偽りは無かった。という話である。この罪というのは、一一四話に出てくる、応天門の放火であり、その放火を発端とする一連の政変が応天門の変である。
『宇治拾遺物語』では、この応天門の変を詳細に記しているのが、この説話を絵巻にしたものとして、四大絵巻の一つである国宝『伴大納言絵詞』がある。この絵巻は後白河法皇が安元三年(一一七七)頃、蓮華王院宝物庫に納めるために、常盤光長という人物に描かせたという説があるが、事実は不明である。しかし、絵巻の中の人物の服装などから、だいたいの年代として、後白河法皇の院政期前後であるとされている。絵巻の内容と一一四話はほぼ同様であり、文末の記述がほぼ一致することから一一...