万葉集の時期区分であるが、古くは賀茂真淵の五区分説や、島木赤彦氏、西郷信綱氏等の三区分説等があるが、沢潟久孝氏、森本治吉氏等が提唱する四区分説がもっとも広く受け入れられている。そしてその四区分とは、①舒明天皇即位(六二九)から壬申の乱(六七二)まで四十四年間②壬申の乱から平城京遷都(七一〇)までの三十三年間③平城京遷都から聖武天平五年(七三三)までの二十四年間④天平五年から、天平宝字三年(七五九)までの二十七年間という時期区分となっている。
次に各時期の特徴について述べたい。まず第一期であるが、二番歌「大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立つ立つ 海原は 鴎立つ立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は」という歌から特徴を見ていく。まず、国見という行為は天皇の農耕予祝儀礼であり、そこにまず呪術性が見られる。そして、天皇個人としてではなく集団の代表として国見を行なうわけであり、それを歌にするという集団性も見られ、国原、海原という土と水という自然の根本を見て、それにより大和国を賛美するという自然との融合もみられるのである。この時期の特徴として挙げら...