『風土記』は、『続日本紀』和銅六年甲子条
機内七道諸国・郡・郷、名著好字。其郡
内所生、銀銅彩色草木禽獣魚虫等物、具
録色目。及、土地沃脊、山川原野名号所
由、又、古老相伝旧聞異事、載史籍言上。
という詔命があり、これを基に作成されたものである。
この詔命の内容は①国・郡・里の地名を表記するのに好い漢字を使い二字で記すこと。②郡内で取れる物産品目を列挙すること。③土地がどの程度肥沃であるか。④どういう理由で山、川等の地名がつけられたか。⑤現在存在しない、あるいは変わった出来事を記載すること。の五つであり、それを記載した文書を提出することを要求している。
『出雲風土記』は、十二条で構成されており、最も完本に近い状態で残されている。この『出雲国風土記』は、③の項目についてはその記載が僅か六箇所のみという例外があるが、一詔命に忠実に編纂されたといえる。そしてその一方で通道、里程数、神社、寺院、正倉、軍団、烽など、詔命にはない項目まで記載しているのが特徴である。そして、詔命に対応する項目についてであるが、①に関しては、例えば、意宇郡の母理郷の好字は文...