序文
初対面の人に出会うとき,人は必ず何らかの印象を抱く。「やさしそう」,「とっつきにくそう」,あるいは単純に「好き/嫌い」など多くの印象をもつ。また,社会には「美しい人は善良である」というステレオタイプがあり,善人は魅力的に悪人は醜く描かれる傾向がある。K.ダイオン(1972)の対人魅力と他人の評価に関する研究では,身体的魅力が高い人は,それ以外の「性格人柄・社会的地位」などの項目において実際よりも高く評価される傾向が見られたとされるように,一般に身体的魅力の高さは,他人の好意的・偏見的な評価を引き出す効果を発揮しやすいといえる(川西2000)。本実験の目的は人物の相貌が実在人物の初期印象に対して及ぼす効果について検討することである。印象形成とは,対人認知の主要な側面のひとつであり,容貌・声・身振り・風評など,他者に関した限られた情報を手がかりとして,その人物の全体的なパーソナリティを推論することをいう(川西1993)。こうした断片的な情報だけからでも,ある程度まとまりを持った印象が形成されるのは,人が特性間の相関について抱く一連の仮定の,『暗黙の性格観(implicit perso...