刑法問題・答案 不法領得の意思
問 Aに恨みを抱いていた甲は、A所有のクリスタルの置物を壊してやろうと
勝手に持ち出し、自宅で壊した。甲の刑責を述べよ。
答案
1 結論
甲は、器物損壊罪の刑責を負う。
窃盗罪は成立しない。
2 窃盗罪(刑法235条)
意義
他人の占有する財物を窃取する罪をいう。
主観的要件
故意の他に、不法領得の意思が必要となる。
不法領得の意思
権利者を排除して他人のものを自己所有物として振舞う意思、
及び物の経済的用法に従って利用・処分する意思を意味する。
3 器物損壊罪
建造物・艦船、公・私用文書、公・私用電磁的記録以外の物を損壊する
犯罪をいう。
4 事例の検討
甲は、恨みを抱いていたA所有の置物を持ち出し、自宅で壊したとするものである。
他人の物を持ち出して、壊すという行為は、権利者を排除して他人のものを自己所有物として振舞う意思に基づいているとはいえる。
しかし、及び物の経済的用法に従って利用・処分する意思に基づくとはいえない。
よって窃盗罪は成立しない。
他人のものを損壊した、ということで、器物損壊罪が成立する。