ここで危機管理広報とは何かを考えてみよう。そもそもここの意味する「危機」とは何なのか。越智訓男『あなたの社会を守る危機管理と広報戦略』によれば危機とは「企業にとって、社会からの糾弾を浴びるか、あるいはその可能性があり、将来の収益力、成長、そして場合によっては企業の生き残り自体をも危険に陥れる事象」である。では同様に危機管理とは何であろうか。危機管理とはリスクマネジメントの同義語(本来はクライシスマネジメントの訳語であったが混同されるようになった)である。経済産業省によれば「いかなる危機にさらされても組織が生き残り、被害を極小化するために、危機を予測し、対応策をリスクコントロール中心に計画し、指導し、調整し、統制するプロセス」である。
危機管理広報
頭が真っ白になって―これは2007年12月10日に開かれた記者会見における船場吉兆取締役(当時)・湯木喜久郎氏、およびその母である湯木佐知子氏の発言である。この発言は一躍世間の話題となり各メディアを席巻した。世間にとっても記憶に新しいことだろう。この発言が会見の枠を飛び出し東京スポーツ主催「第8回ビートたけしのエンターテイメント賞」において不祥事ながら特別賞を受賞してしまったという、なんとも格好の悪いエピソードがこの事件の持つ衝撃の強さというものを物語っている。湯木親子によるこの会見は残念ながらそれほどまでにお粗末なものであったと言わざるを得ない。
さて、私が今回のレポートで取り上げたい専門用語は「危機管理広報」である。その理由は危機管理広報をより深く知ることで重大な危機による社会的・経済的損害を防止、回避、あるいは低減できるからである。また危機管理広報は特にメディアの発達した現代においては非常に有用であるにも関わらず導入がどうやら遅れがちな分野であるようなので、これに対し我々が知見を持ち広めることは必ずや社会的利益になるはずである。
私が危機管理広報に興味を持つきっか...