「笑いについて-その作用と理論-」
一、 はじめに
笑いという現象は、私たちのあまりにも身近にある。あまりにも身近にあるものの宿命として笑いは、あまり立ち止まって考えられることがない。しかも、笑うということの否定的な面は、嘲りの笑いによって対象を攻撃するといったことぐらいのものであろう。もっとも、その破壊力はすさまじいもので、例えば、ロバート・キャパの「裏切り者」(タイトルはうろ覚えだが)という作品の中にそのすさまじさはよく現れている。戦争が終わって町に戻ってきた戦争協力者の親子を民衆が取り囲んで笑いものにしている写真で、取り囲んでいる民衆は大人から子どもまでがそろってあまりにも残酷な視線をその親子に投げかけている。しかし、それは笑いの中でも例外的なもので、ほとんどの笑いは、肯定的な意味を持っている。このこともわれわれが普段笑いについて考えることがないことの一因になっているのであろう。
しかしながら、考えてみると笑いはわれわれの生活の隅々にまで入り込んでいる。人にあって話をするときよっぽどのこと(例えばけんかや相手に不幸が会ったなどの状況)がない限り、われわれは笑顔で会話するであろうし、テレビをつければ、必ずいくつかのバラエティー番組が放送されている。このような状況の中で笑いは何らかの重要かつ不可欠な役割を果たしていると考えても不思議ではないだろう。
そこで、笑いの分類に始まり、笑いの持つ様々な役割、機能について考えてみたいと思う。
〈参考文献〉
・ 『笑いのコスモロジー』小馬 徹 他著 1999年 剄草書房
「笑い殺す神の論理-笑いの反記号論」小馬徹
「現代日本の笑いの状況」寺沢正晴
・ 『笑いと治癒力』ノーマン・カズンズ著 松田 銑訳 2001年 岩波現代文庫
・ 『影の現象学』河合 隼雄著 1987年 講談社学術文庫
・ 『人はなぜ笑うのか -笑いの精神性理学-』志水彰 角辻豊 中村真共著
1994年 講談社
・ 『imago1995年3月号』青土社
「笑いの心的効果」中村真
「反感情としての笑い」三浦俊彦
「笑いについて-その作用と理論-」
はじめに
笑いという現象は、私たちのあまりにも身近にある。あまりにも身近にあるものの宿命として笑いは、あまり立ち止まって考えられることがない。しかも、笑うということの否定的な面は、嘲りの笑いによって対象を攻撃するといったことぐらいのものであろう。もっとも、その破壊力はすさまじいもので、例えば、ロバート・キャパの「裏切り者」(タイトルはうろ覚えだが)という作品の中にそのすさまじさはよく現れている。戦争が終わって町に戻ってきた戦争協力者の親子を民衆が取り囲んで笑いものにしている写真で、取り囲んでいる民衆は大人から子どもまでがそろってあまりにも残酷な視線をその親子に投げかけている。しかし、それは笑いの中でも例外的なもので、ほとんどの笑いは、肯定的な意味を持っている。このこともわれわれが普段笑いについて考えることがないことの一因になっているのであろう。
しかしながら、考えてみると笑いはわれわれの生活の隅々にまで入り込んでいる。人にあって話をするときよっぽどのこと(例えばけんかや相手に不幸が会ったなどの状況)がない限り、われわれは笑顔で会話するであ...