表象文化、芸術表現論
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの連作
近代の自然描写と思想について、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの連作、「春」「夏」「秋」「冬」「朝」「昼」「午後」「夕」そして海景画「北極海(かつては希望号の難破)」を中心に考察していきたい。
フランス革命により、社会的ヒエラルキーは変わり得ると実感されるようになった。経済活動が自由化に向かうと、経済上の社会構造に動揺が生じた。市民階層はこれまでの支配階層が下り坂にあるとみなし、自分たちを上り坂にあるとみなした、18世紀に優勢だった静的な世界のイメージは退き、動的なものにとってかわられた。政治や社会生活において、ことの経過が段階を追って進んでいく状況にあると感じられていたが、この感覚は自然や歴史や芸術にも伝わっていった。そして、ここに認識された成長発展の過程は、全体のであれ、個人のであれ、人間のそれと比べられた。ある種の高次な力によって導かれていると思われていた、一つの大きな進歩の流れに、宗教でさえも左右されるとみなされた。こうした考えを抱いていたのが、基本的にはロマン派の人々だった。フィヒテがそれに哲...