<総論>
1 意義
(1)定義
法人格否認の法理とは、株主から独立の法人格をもっている会社においてもその形式的独立性を貫くことが正義公平に反すると認められる場合に、特定の事案限りにおいて会社の独立性を否定して、会社とその背後にある株主・社員とを同一視する法理をいう。
法人格否認の法理
<総論>
1 意義
定義
法人格否認の法理とは、株主から独立の法人格をもっている会社においてもその形式的独立性を貫くことが正義公平に反すると認められる場合に、特定の事案限りにおいて会社の独立性を否定して、会社とその背後にある株主・社員とを同一視する法理をいう。
機能
株式会社は法人であり、株主と別個の(法)人格を有する。しかし、一人会社のように株主と会社との関係が密接なケースでは、両者の法人格の独立性を形式的に貫くことが、場合により正義・衡平に反することがある。その場合に、特定の事案につき会社の法人格の独立性を否定し、会社とその背後の株主とを同一視して事案の衡平な解決をはかる法理が「法人格否認の法理」である(最判昭和44・2・27 民集23巻2号511頁)。
このように、法人格否認の法理は、法人格の独立性や間接責任の例外を認めるという形で機能することになる。
本法理は、我が国では典型的には、①小規模な株式会社における実質的一人株主の個人責任を追及するために援用される(有限責任の排除)が、中小企業に関するそれ以外の問題解決に適用され(最判昭和44・2...