医療福祉論1

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    資料の原本内容

    「本章で提示された事例から一事例を選び、患者・家族の困難な状況と個別ニーズを明らかにし、MSWが果した役割について考察してください。」
     1.退院支援(高齢者の退院支援)
    p192:事例1―①「単身高齢者の退院支援」②川田さん③88歳④肺炎、陳旧性脳梗塞⑤A病院、B地域包括支援センター、C保健センター
     (1)支援の経緯と利用者のニーズを明確にする。
     ここでは、MSWが関わった高齢者の独居生活である川田さんの退院後の支援の経過をとりあげ、医師や看護師から川田さんの第一希望である、在宅復帰への退院支援の相談を依頼され関わりがはじまる。
     病院から、介護保険サービスを利用しながらもできるだけ自立して暮らしていこうとする高齢者の在宅復帰に対する支援を取り上げ、在宅という場面での高齢者の不安を取り除き、高齢者の意思を尊重し地域生活を円滑に行えるよう、媒介調整や社会資源の紹介、多職種間の連携で地域社会において高齢者が前向きに暮らせるよう支援する。
    MSWは、ニーズの発見、介護保険サービスの情報提供、生活環境の整備、社会的接触の機会創出、本人による障害の受容、地域との関係、自己実現の探求とチームの連携と協働等が必要となってくる。川田さんが、入院に至った経緯は元々不自由だった下肢が悪化し、食事も取れず自宅で動けずにいたところを新聞配達員により発見され民生委員の連絡により救急搬送された事によるもので、退院後の課題として、独居生活でも安心して生活できる地域や近隣住民の見守り、生活支援が必要であると考えられる。
    (2)利用者のニーズの明確化と環境調整
     まず、第一に利用者の話に対して傾聴に努め、信頼関係の構築を目指した受容的、共感的関わりが必要である。利用者のニーズを明確にし、在宅生活を目指したサービス活用の情報提供と環境を調節する。このとき利用者にとって関心の高い、在宅での生活場面を利用者に質問し、具体的な生活の要素を一つひとつ問いかけることで回答しやすくし、言葉だけでなく、表情や仕草、言葉の音の高低や視線など、非言語的な部分も注意深く観察し、利用者の思いを感じ取らなければならない。その上で利用者が、障害を受容することで自信を回復し、自立への意欲を引き出し、利用者が主体的に暮らし、社会的接触の幅を広げていくための地域資源活用の情報提供と機会の創出、主治医による病後の経過観察への意見や直接ケアをしている看護師からの意見、地域包括支援センターや保健センターとのケアカンファレンスの活用と連携、成果の評価、新たな可能性を探求し、実現への意欲を協働で高めていくチームアプローチが必要である。
     川田さんの場合、ADLの著しい低下が見られない事、近隣住民との関係も親密で日頃から、おかずの差し入れや、声かけもあること、経済面に関しても老齢厚生年金の受給があるため特に問題ないとされたが、自宅に戻り一人で気楽に暮らしたいという希望に添えるよう、在宅生活においての問題点である、車椅子生活における生活の不自由な点(入浴や買い物)をどのような社会資源で補うか、病気の際にはどういった支援や協力が図れるのかが課題となる。
    (3)支援のための社会資源の確認と協働
    利用者に応じたサービスを活用、情報提供を行い、環境を整え、本人が障害を受容し、自立への意欲を全面に引き出し、社会的接触の幅を広げ、可能性を探求する気持ちを持つことで、自分らしく主体的に暮らしていけるよう支援を継続する事が実践の重要課題である。例えば、川田さんはヘルパーによる支援を拒否していることについて、これは、ヘルパーの存在は知っているも、どのような支援方法が可能なのか、また、どういった内容の介護保険サービスがあるのか、といった知識がないことから、利用に対して抵抗があったもので、介護保険サービスに対する、明確な情報や、自分の能力に応じてサービスが変更できる、旨の説明をすることで、本人もサービス利用に対して意欲的になり、一人で生活していく上で、入浴や食事、家事労働に対する不安も解消される。また、病院の看護師による、オムツから排せつの自立に向けたリハビリ、社会的接触機会の創出や地域との関係については、入浴や食事、新たな友人もできるデイサービスの利用が望まれる。また、保健センターによる安否確認や近隣との日々の接触で、社会的孤立を防ぐことができる。これは、チームの連携と協働にも当てはまり、高齢者の独居生活で一番心配な、孤独死や社会的排除に対するセイフティーネットの役割でもあり、自立支援のための機関や団体が地域社会の中で連携する機関ネットワーク、個人や家族を核とした社会資源のネットワークは介護支援サービスであり、介護支援ネットワークを円滑に実行して行く為には、地域社会をベースにした機関間の総合的ネットワークが不可欠となる。
    高齢者の入院は、これまで潜在化していた家族関係の不和や経済的、住環境をはじめ、色々な生活課題や問題が生じる契機となり、疾病や後遺症によって、長期継続されてきた生活が一変し、精神的な苦痛が伴う事も少なくない。このような問題を踏まえ、患者や家族とともに具体的な問題解決を進め、より豊かな地域生活の継続を支援し、高齢者に自己を発展させ、新しい生活を受け入れるよう支援をしなければならない。また、退院支援については、入院当初から入院生活の支援の一環として実行するのが望ましいとされ、退院後の方向性が明確でない場合はもちろん、退院後の他介護施設へ移る可能性が高い場合でも、在宅復帰の可能性を視野に入れ目標とした取り組みは、入院している時に留まらず、在宅療養が出来るだけ長く続けられるよう退院後も病院機能を生かした形で継続したケアを提供する態形を整えることが求められている。
     2、MSWの果たす役割
     医療機関においてMSWが果たすべき役割は、MSWの原則である媒介、仲介を基本としたものであると考える。それは、医療を受ける側(患者や家族)と医療を提供する側(病院、医療スタッフ、関係機関等)との橋渡しであり、両者の視点からより良いサービスが提供され享受されるよう努力することである。特に家族への援助や社会生活問題への支援は医療の範疇ではないためMSWの活躍が期待されている。具体的には、治療方針・方法の説明や患者側の要求の相互提供、療養中から社会復帰の支援、受診受療、退院時に介護が必要な場合、行政機関や福祉の機関との橋渡しを行い、さらには入院による経済的不安、社会復帰への援助の際に、学校や職場への理解や本人の支援の働きかけや、早い段階からの支援を開始できる体制を院内外で作り上げることも退院支援でのMSWの役割の一つである。
    入院で生じた社会との隔たりから生じる心理的、社会的問題を解決すべく援助、経済問題のための社会的支援制度の紹介や地域社会との調整、他病院や関係機関と連携し生活問題の解決や、在宅生活への支援が分断されることのないよう、情報の共有や役割分担を行うことが必要である。このように、一見何でも屋の様な印象を受けるが、その背景には、高度な専門知識と技能が必要であり、医療機関で役割を果たす上では、社会福祉の領域だけでなく、社会保障、医療分野の専門知識も必要であると考えられる。
    参考著書
    『ソーシャルワーカーとケアマネジャーのための
    相談支援の方法』
    2008年4月 久美株式会社
    狭間 香代子編著
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