関節リウマチ

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    資料の原本内容

    関節リウマチについて
    【概要】
    多発性の関節痛と関節腫脹を主症状とした原因不明の破壊性、進行性の炎症性関節疾患である。手や足の小さい関節あるいは肘、膝関節などの疼痛と主張で初発し、しだいに全身の関節を侵す。当初は関節滑膜炎からパンヌスを形成し、炎症が軽快と憎悪を繰り返して、関節軟骨や骨組織が破壊され、関節の変形、線維性拘縮、また強直をきたす。そのため早期診断、早期治療が重要である。*悪性関節リウマチは、血管炎や神経炎が  強く、全身の臓器が侵される。予後悪い。
    【頻度】
    20~50歳代に多いが、最近高齢で初発する患者もみられる。女性患者は男性患者の約5倍である。患者の約15%は多関節破壊や諸々の全身性合併症のために重度機能障害者となる。
    【病理組織所見】
    典型的な滑膜組織像は、絨毛状の滑膜増殖、滑膜表層細胞の増生とフィブリノイドの沈着、リンパ球や形質細胞を主体とする炎症細胞の浸潤、リンパ濾胞形成などである。
    滑膜内に認められるリウマトイド結節は皮下結節と同じ組織像であって、中心部に壊死巣があり、その周囲に間葉系細胞が棚状に配列する特異な像を呈する。滑膜に由来する遊離体である米粒体には、血管あるいはその遺残を確認できる。
    関節軟骨表面の辺縁に炎症性肉芽であるパンヌスの浸潤を認める。滑膜性肉芽は関節軟骨の表面を侵食すると同時に骨髄内へ侵食している。X線像でびらんが存在する部分がこの所見に相当する。
    【症状】
    関節内症状 
    1.朝のこわばり:RA患者は朝起きると関節がこわばって動かしにくいと訴えることが多い。この朝覚醒時
    に指を屈伸させるときに感じるこわばりを“朝のこわばり”という。“朝のこわばり”の持続時間はRA 活動
    性を推定する目安となる。
    2.罹患部位:手関節、足趾などの初発が多い。(膝、肘関節の初発少ない)両側性(左右対称性に病変が
    発症)PIP,MCP関節(DIPが侵されることは稀)
    3.疼痛:多関節の自発痛と運動痛を訴える。自発痛は疼くような痛みであり、天候の影響をうける。四肢の
    全ての関節について疼痛の有無を調べ点数化した疼痛関節点数は、リウマチ活動性の1つの指標となる。
    4.腫脹:滑膜の増殖、関節包の肥厚にもとずく関節腫脹が認められる。しばしば左右対称にみられる。関節
    液貯留を認める。
    5.関節の不安定性:関節の腫脹が持続すると、関節包や関節包性靭帯が弛緩するため、あるいは関節破壊の
    ために、関節の動揺性が出現する。関節端が著しく吸収され骨欠損を生じるRAをムチランス型RAという。
    指では、関節端が吸収されてその部の皮膚がオペラグラス様に伸縮する。これをオペラグラスハンドという。
    6.関節可動域制限:はじめは疼痛に対する反応性の筋緊張のために関節運動が制限される。続いて関節面の破壊、軟部組織の拘縮のために関節運動が制限され、拘縮や強直が生じる。
    7.変形:手指では、MCP関節で指が尺側に傾く尺側偏位、PIP関節が過伸展しDIP関節が屈曲したスワン
    ネック変形、PIP関節が屈曲しDIP関節が過伸展したボタン穴変形。足趾では開張足、外反母趾、槌趾など
    の変形が出現する。
    ・尺側変形:尺側偏位は主としてMP関節部の不安定性で生じ、屈筋腱が尺側方へ移動する。RAの手指の変
    形のうち最も矯正困難な変形の一つで、手指の機能上で障害度が高い。特にものをつかもうとするとき、筋肉
    の力が物の把握に利用されず、変形増強の方向に分散されるので、患者の危機度が高い。
    ・スワンネック変形:PIP関節部での側伸筋腱のリウマチ病変による掌側方移動によるもので、屈筋腱の側方
    移動を伴うものや骨間筋の拘縮、正中伸筋腱の過緊張、拘縮等が原因にあげられる。いったん形成されると、
    自然治癒はほとんど無く、変形度は強くなる一方である。
    ・ボタン穴変形:スワンネック変形と逆の現象をとる。主としてPIP背側の正中伸筋腱の断裂によるPIP関節の不安定性と側副靭帯の掌側脱臼による測伸筋腱の過緊張等が生じPIP、DIP関節の自由度が制限される。
    8.握力低下:関節の疼痛や筋萎縮のために握力が低下する。RAでは握力の測定に水銀血圧計を改良した握
    力計を用いる。片手で3回測定し、その最高値を記入する。ランスバリー活動指数を求める時には3回測定し、
    左右の平均値を用いる。
    関節外症状
    1.発熱:37℃台の微熱は稀ではないが、38℃を超える発熱は稀である。
    2.腱鞘炎:腱鞘滑膜にも関節滑膜と同様の炎症が起こり、疼痛と腫脹をきたす。屈筋腱の腱鞘が手根菅内で腫脹し、正中神経を圧迫すると手根菅症候群を生じる原因となる。
    3.リウマトイド結節:肘頭部や後頭部など骨が突出した部分に生じやすい。RA患者の約5%に認められる。       
    4.貧血:炎症の程度と貧血の程度はしばしば相関する。血清鉄が低下し低色素性であるが、鉄欠乏性貧血と
    異なり不飽和鉄結合能はむしろ低値を示す。
    5.アミロイドーシス:10年以上の病歴をもつ症例に多く合併する。RAの治療中に下痢、蛋白尿を認めた
    場合はアミロイドーシスを念頭に置く。
    6.乾燥症候群:涙腺や唾液腺の慢性炎症にもとずくものでシェーグレン症候群とも呼ばれる。
    7.胸膜炎・肺線維症:肺患者にRAが合併した場合キャプラン症候群と呼ぶ。
    8.神経症状:環軸関節亜脱臼が進行するとしばしば脊髄圧迫症状が出現する。
    9.リンパ浮腫:四肢の一側または両側に浮腫が出現する。リンパ管炎に基づく閉塞が生じるためで難治
    10.骨粗しょう症:初期には関節炎がある関節近傍の骨組織に萎縮が生じる。慢性期になると運動量の低下、
    閉経、ステロイド剤などの影響で全身性の骨粗しょう症が出現する。
    【検査所見】
     1.単純X線像 ①軟部組織の腫脹②関節周囲の骨萎縮③関節辺縁のびらん④関節裂隙狭小化
             ⑤関節面破壊⑥亜脱臼、脱臼
     2.関節造影像 ①滑膜表面の形状や関節軟骨の状態 ②米粒体
     3.CT像   ①関節面の破壊 ②骨髄内への肉芽の浸食の状態
     4.MRI像  ①関節液貯留 ②膝窩嚢腫の拡大
     5.血液・関節液の検査所見①赤沈値亢進、CRP値上昇 ②時に白血球増多③リウマトイド因子[RF]陽性 
    【診断】 ◇アメリカリウマチ協会の分類基準
    1.少なくとも1時間以上持続する朝のこわばり
    2.3個以上の関節の腫脹
    3.手・中手指関節(MCP)近位指関節(PIP)の腫脹
    4.対称性関節腫脹 
    5.手・指のX-P変化
    6.皮下結節(リウマチ結節)
    7.リウマチ因子の存在
    以上の7項目中4項目を満たすものをRAと診断する。
    なお項目1から4までは少なくとも6時間以上持続していること
     ◇早期関節リウマチ診断基準
    1.3つ以上の関節で、指で押さえたり動かしたりすると痛みを生じる
    2.2つ以上の関節に炎症による腫れが見られる
    3.朝のこわばりが見られる
    4.皮下結節(リウマトイド結節)が肘や膝に見られる
    5.血液検査で赤沈に異常が見られる。またCRPが陽性である
    6.血液検査でリウマトイド因子が陽性である
    上記6つのうち3つ当てはまる場合を早期関節リウマチとしている
    上記の6項目のうち、3項目以上にあてはまる場合を早期関節リウマチとし
     ◇Stainbrockerのstage分類(進行程度による分類)
    進行度
    (stage) Ⅹ線所見 筋萎縮 関節外の罹患
    (結節) 関節変形 強直 Ⅰ
    [初期] 破壊像なし
    時に骨萎縮 なし なし なし なし Ⅱ
    [中等度進行]
    骨萎縮
    骨や軟骨の軽い破壊が時に存在 関節付近 あってもよい なし なし Ⅲ
    [高度進行] 骨萎縮
    骨や軟骨の破壊像 広範 あってもよい 亜脱臼、尺側偏位、過伸展 なし Ⅳ
    [末期] Ⅲ+骨性強直 広範 あってもよい Ⅲと同じ 線維性または骨性強直
    ◇Stainbrockerのclass(分類機能障害の分類)
    ClassⅠ 身体機能は完全で、不自由なしに普通の仕事は全部できる ClassⅡ 動作の際に1ヵ所あるいはそれ以上の関節に苦痛があったり、または運動制限があっても普通の活動ならなんとかできる程度 ClassⅢ 普通の仕事とか、自分の身の回りのことがごくわずかできるか、あるいはほとんど出来ない程度の機能 Class Ⅳ 寝たきり、あるいは車椅子に乗ったっきりで、身の回りのことはほとんどまたはまったく出来ない
    ◇Lansbury活動指数(リウマチ炎症の活動性を表す指標)
    ・関節炎の活動の程度 
     ・薬物投与したときの活動性の変化をみるもの 
      ①朝のこわばりの持続時間
      ②筋疲労(疲労の出現時間)
      ③赤沈の1時間値
      ④関節症状を抑えるのに必要なアスピリンの量
      ⑤握力
      ⑥関節点数
      *朝のこわばりの持続時間、握力、関節点数、赤沈の4項目                
       に関しそれぞれ%に換算し、その合計を評価点数とする。

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