なぜ日本人の耳には英語が速く聞こえるのか。単位時間当たりにどれだけの量の音声が実際に発せられたかを表す「客観的速度」は、1つの言語に対しては音節の数で速いか遅いかを判断できる。しかし比べる言語が異なる場合は、言語によって音節の構造が異なる為に音節の数では単純に比較する事ができない。英語が速く聞こえるのはこの客観的速度ではなく、聞き手の主観的な感覚を表す「主観的速度」によってであり、そのため日本人は英語を速く感じているだけなのだ。では、客観的に速くないのであれば、何が日本人の主観で英語を速く感じさせてしまうのか。以下の理由が仮説としてあげられる。
はじめに
本稿は、広実義人氏の研究論文、『なぜ英語は速く聞こえるのか?-仮説とその実証方法の提案-』における考察について、批判的な視点から評価し、新たな仮説を再考察していく事を目的とする。それにあたり、第1章は広実氏の論文の要点をまとめ、第2章では自分の意見として問題提起と仮説を立てそれを検証し、最後の考察へとつなげていく。
第1章 本文の要約
なぜ日本人の耳には英語が速く聞こえるのか。単位時間当たりにどれだけの量の音声が実際に発せられたかを表す「客観的速度」は、1つの言語に対しては音節の数で速いか遅いかを判断できる。しかし比べる言語が異なる場合は、言語によって音節の構造が異なる為に音節の数では単純に比較する事ができない。英語が速く聞こえるのはこの客観的速度ではなく、聞き手の主観的な感覚を表す「主観的速度」によってであり、そのため日本人は英語を速く感じているだけなのだ。では、客観的に速くないのであれば、何が日本人の主観で英語を速く感じさせてしまうのか。以下の理由が仮説としてあげられる。
(1)lexical access
第一の原因にlexical accessが挙げられる。我々...