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目次
1 背景・目的 1
2 理論 1
2.1 電波送電方法 1
2.2 電磁誘導方法 2
3 方法と結果 2
3.1 電波送電方法 2
3.1.1 ダイポールアンテナ 2
3.1.2 パラボラアンテナ 3
3.1.3 パッチアンテナ 4
3.1.4 スリーブアンテナ 5
3.1.5 パッチアンテナ改良版 5
3.2 電磁誘導方法 8
4 考察 12
4.1 電波送電方法 12
4.2 電磁誘導方法 12
5 参考文献 13
1 背景・目的
携帯電話やデジタルカメラ,iPodなど,充電池を使用している機器がたくさんある。これらの機器を充電する際,非接触で充電できるととても便利であることから,わたしたちはこの技術に興味を持った。そこで調べた結果,大きな方法として電波送電方法と電磁誘導方法の2種類があったので,2班に分かれて研究をした。
2 理論
2.1 電波送電方法
マイクロ波は電波の中でも特に電力を伝えやすいものであり,電子レンジや無線LANアクセスポイントなどの身近なところで使われている。そのことから,今回はマイクロ波を中心に研究をした。高周波であるマイクロ波の発振技術は非常に高度で危険であるため,送電部には電子レンジ及び無線LANアクセスポイントを使用した。そこで発振されたマイクロ波をアンテナで受電する。その受電したものを整流回路で直流にし,充電する。その受電部の研究を主に行った。
電子レンジ・無線LANアクセスポイントから発せられるマイクロ波の周波数は2.4[GHz]である。波長は以下の(ⅰ)式から求められる。
λ[m] = …(ⅰ)
電波の伝播する速度,すなわち光速cは300[Mm/s]なので,波長λは125[mm]である。
整流回路には図1のような二倍電圧整流回路を使用する。この回路は通常の整流回路より高い電圧が得られる。充電をするためにはまず高い電圧が必要であると考えたため,これを選択した。入力された交流が1つ目のコンデンサによって溜められ,グラウンドの位置が下がる。それを2つ目のコンデンサ・ダイオードによって直流へ変換される。このため,通常の整流回路よりも多くの電圧を得ることができる。
図1 二倍電圧整流回路
2.2 電磁誘導方法
電磁誘導を応用した相互誘導の原理を利用する。2つのコイルを接近し、一方のコイルに電流が流れると磁束が発生し、同磁束が他方のコイルを貫くと磁束が変化しファラデーの電磁誘導の法則より誘導起電力が発生する(ⅱ・ⅲ式)。以上より、1次コイルに流れる電流の変化量に応じて、2次コイルに電圧が生じる。
V[V] = M・ …(ⅱ)
M = k …(ⅲ) (∵ k:結合係数 0≦k≦1)
しかし、磁界の強さはクーロンの電磁気の法則より、距離の2乗に反比例し、また、相互コイル間で漏れ磁束が発生するため、理論値より大きく外れる。
また,(ⅳ)式より、インダクタンスによってリアクタンスが影響する。
XL[Ω] = ωL = 2πfL …(ⅳ)
コイルの特性を数値化するため,指標として伝送効率(ⅴ)を用いる。
伝送効率[%] = ×100 …(ⅴ)
3 方法と結果
電波送電方法
考案して実験した方法を以下に示す。
3.1.1 ダイポールアンテナ
2本の直線状の銅線を左右対称にし,その中心から給電を行うアンテナである。形状を図2に示す。今回は全長がλのものを作成した。これを500[W]の電子レンジの中に入れ,給電線を延ばし,その先に二倍電圧整流回路を取り付けた。可変抵抗を取り付け,電圧を測定した。しかし,電子レンジを付けるとアンテナが燃えてしまった。一方,無線LANアクセスポイントからの送電ではほとんど電圧が得られなかった。
図2 ダイポールアンテナの形状
3.1.2 パラボラアンテナ
λ,2λの銅線を円形にしたループアンテナを作り,それをパラボラに見立てた小さな中華鍋に取り付けパラボラアンテナとした。その形状を図3に示す。2つあるループアンテナは片方をグラウンド用にし,同軸ケーブルでつないだ。ダイポールアンテナと同様,先には二倍電圧整流回路と可変抵抗を取り付けた。このアンテナは大きいため電子レンジの中に入らなかったので,無線LANアクセスポイントでのみ測定したが,ほとんど電圧が得られなかった。また,中華鍋を取り外し,ループアンテナのみで測定しても電圧の値は変化しなかった。
図3 パラボラアンテナの形状
3.1.3 パッチアンテナ
基板にパターンを描くアンテナで,図4のように設計1)・製作した。片面基板に図4のパターンをエッチングし,その裏面にはグラウンド面に見立てたアルミ板を取り付けた。以前までは給電線を長くし電子レンジの外側に整流回路を付けていたが,給電線のすぐ近くにダイオードを設置することによってすぐ直流に変換することにした。アンテナ本体を電子レンジの中に入れ,線を延ばした先に可変抵抗R[Ω]を取り付け,電流の測定をした。それを仕事率に変換した測定結果を図5に示す。また,仕事率の求め方を式(ⅵ)に示す。パッチアンテナを複数直列につないで同様に測定したが,1つのときとほぼ同じ値しか得られなかった。
W[W] = I[A] × V[V] = I2[A2] × R[Ω] …(ⅵ)
図4 パッチアンテナの形状
図5 パッチアンテナの仕事率
3.1.4 スリーブアンテナ
同軸ケーブルで作成した直線状のアンテナである。全長は1波長で,そのうち半波長分のグラウンド部分を反対側に折り返した図6のような形状である。製作が容易だったため,マイクロ波以外の帯域でも試すことにした。その帯域とは,地上デジタル放送の極超短波(470-770[MHz]),FMラジオの超短波(76-90[MHz])などである。(ⅰ)式より波長を求め,作成した。しかし,どの波長でもほとんど電圧は得られなかった。
図6 スリーブアンテナの形状
3.1.5 パッチアンテナ改良版
以上の実験から,パッチアンテナが向いていることがわかったので,それを改良することにした。以前では参考文献からの設計であり,また,実際に作成すると時間がかかるので,パッチアンテナのパターンの形状・大きさを変え,シミュレーションをした2)。図7のパッチアンテナ本体は,通常の四角型でほぼ一辺半波長の正方形である。マイクロストリップラインと呼ばれる給電線の幅3)はほぼ以前と同様である。マイクロストリップラインは,幅によってインピーダンスが変化するが,長さが変わることでインピーダンスは変化しないため,今回長さは考慮せずに設計した。
これをシミュレーションした結果が図8である。スミスチャートと呼ばれるこのグラフは,アンテナの受電効率をインピーダンスによって示す。今回はマイクロ波の帯域でも特に2.4[GHz]を中心としているので,その点がグラフの中心であればあるほど受電効率がよいということになる。このグラフの外枠の円状に線が乗っていると,そのアンテナは電波を全反射していることを示す。
通常普及しているパッチアンテナは図7と同様な四角型が多いのだが,円型の方が効率よく電波が受電できるのではないかと考え,図9のような形状のパッチアンテナをシミュレーションした。図8と似た良いスミスチャートが得られたので,四角型と円型の2種類のパッチアンテナを実際に作成することにした。
アンテナ本体の表面とグラウンド面にしていたアルミ板の距離も特性に影響すると考え,一定の距離が得られる両面のポジ感光基板(Sunhayato NZ-G33KR)を用意し,作ったパターンを感光した。二倍電圧整流回路は順方向電圧の小さいショットキーバリアダイオード(東芝CMS01)と1[μF]のチップコンデンサ(TDK C3216X7R)を使用し,コンパクトにまとめた。作成したパッチアンテナの二倍電圧整流回路部分の写真を図10に示す。
また,シミュレーションした結果,図7より図11の切り込みを入れたものの方が良い値を示したので,図7及び図9のようなアンテナ以外にも図11のように給電点がアンテナ本体の真ん中に来るよう切り込みを入れたものも考え,実際に実験をした。その際,最も良い給電点の位置を探すため,図7の切り込みのないものをはじめに作り,実験を重ねるごとに切り込みを増やすことにした。円型でも四角型と同様な実験をした。この切り込みの長さとアンテナ本体の形状による電圧の違いについての実験結果のグラフを図12に示す。
図8 四角型パッチアンテナの
シミュレーション結果 スミスチャート
図7 四角型パッチアンテナの形状
図9 円型パッチアンテナの形状 図10 二倍電圧整流回路の写真
図12 切り込みの長さと電圧のグラフ
図11 切り込みあり
四角型パッチアンテナの形状
3.2 電磁誘導方法
始めに,コイルの形状による伝送効率の変化を実験した。この際の回路を図13に示す。コイル間の距離を変化させていき,この時の伝送効率を測定する。なお,その距離とはコイルの向かい合った面の距離のことである。測定結果を表1,図14に示す。
図13 伝送効率の実験回路
表1 距離と伝送効率測定結果
図14 距離と伝送効率
図14より,伝送効率は距離に大きくに影響し,さらに表1より距離を0にし...