日本製の工業製品は1980年代、高品質でありながら低価格であることをモットーに世界市場に進出し、海外で高い評価を得ることができた。それは常に原価を低くおさえようと改善を積み重ね、より良い製品を生産しようとしてきた企業努力が背景にある。企業は原価を低くおさえるためには原価がどのように構成され改善することができる余地を持っているか把握する必要がある。すなわち、原価数値の分析、検討を通じて原価管理に資する正確な資料を提供する原価計算を行われる必要がある。これによって、企業は製品を生産し、サービスを提供するために消費された経済財の価値犠牲を測定することができ、製造活動のどの部位で予算との差異が生まれているのかが把握できるようになる。
原価計算には以上のような企業の内部利害関係者に役立つ管理会計目的の他に、企業の外部利害関係者に役立つ財務諸表を作成するための財務会計目的を併せ持つ(1)。その際、原価計算は適切に行われなければならないため、わが国では「原価計算基準」が存在する。 「原価計算基準」は、実践上の規範として当時における企業の原価計算の慣習の中から...