人間は他者との関係を築こうとするとき,個人によってある一貫した傾向が見られるようである.このことに関しては,Bowlbyの愛着理論と内的ワーキングモデルによって説明されている.愛着とは,“ある特定の対象との間に形成される愛情の絆”である(鳥丸,2001).生まれてから最初の愛着は,乳幼児期におもに両親との間に形成される.このころから青年期にかけて,子どもは愛着対象との具体的な相互体験,特に傷みや疲れ,恐れなど愛着対象との接近要求が高まる状況において,愛着対象への近接・接触や援助を求めたときにどのような応答が返ってきたかという体験の繰り返しによって,自分自身が愛着対象にどのように受容されているかについての自己に対する主観的な確信と,自分が近接したときにその愛着対象がどのような応答を返してくれるかという他者に対する主観的な確信を形成していく.この二つの主観的な確信を内的ワーキングモデルと言い,前者の自己に対する主観的な確信を自己の作業モデル,後者の他者に対しての主観的な確信を愛着対象の作業モデルと言う(Bowlby,1973).
また,愛着対象の作業モデルは愛着対象以外の他者に般化されるとBowlby(1973)は述べている.つまり,親との関係が安定していて愛着対象の作業モデルが肯定的であれば,自分は親以外の他者にも受容される存在であると確信し,いかなるときも自分を助けてくれる者がいることを確信する.
逆に,親との関係が不安定であり,愛着対象の作業モデルが否定的であれば,愛着対象以外の他者に対しても自分は受け入れられない存在であることを確信するようになる.これらの確信が親以外の他者に対する行動にも影響を与えている.つまり,親への愛着の作業モデルが他者との関係を規定していると言える.
青年期における親への愛着が
新しい対人関係構築に与える影響
問題
人間は他者との関係を築こうとするとき,個人によってある一貫した傾向が見られるようである.このことに関しては,Bowlbyの愛着理論と内的ワーキングモデルによって説明されている.愛着とは,“ある特定の対象との間に形成される愛情の絆”である(鳥丸,2001).生まれてから最初の愛着は,乳幼児期におもに両親との間に形成される.このころから青年期にかけて,子どもは愛着対象との具体的な相互体験,特に傷みや疲れ,恐れなど愛着対象との接近要求が高まる状況において,愛着対象への近接・接触や援助を求めたときにどのような応答が返ってきたかという体験の繰り返しによって,自分自身が愛着対象にどのように受容されているかについての自己に対する主観的な確信と,自分が近接したときにその愛着対象がどのような応答を返し
くれるかという他者に対する主観的な確信を形成していく.この二つの主観的な確信を内的ワーキングモデルと言い,前者の自己に対する主観的な確信を自己の作業モデル,後者の他者に対しての主観的な確信を愛着対象の作業モデルと言う(Bowlb...