「百科全書」はジョン・ロック流の経験論とニュートンの打ち立てた新科学、およびこれから派生してきた感覚論・唯物論を核とし、これらの思想にもとづいて当時の技術的・科学的な知識の最先端を集めたもので、スコラ哲学、デカルト主義などの古典的世界観をうち破り、自由な考え方を普及するのに大きく貢献したといえます。しかし、「百科全書」が出版されたことの意義は、そうした思想的な功績だけではなく、権力側の検閲、また反対派による批判などの困難をくぐりぬけて刊行されたこと自体にあるといってもよいでしょう。
「百科全書」の出版が決まってから完成するまでの、流れは授業で習ったとおりですが、この様子は、まさにディドロの努力ばかりが印象に残るものとなりました。プラド事件や「精神論」事件などの危機や非合法出版物に指定されたことなど、体制側による「百科全書」への弾圧に耐え、当時としては最大であった出版物を完成することができたのはディドロなしには考えられないことです。途中で出版者ル・ブルトンによる無断書き換えが起こったりもしたが、商売のひとつとして百科全書の出版に関わっているル・ブルトンと、自分の思想の集大成として携わっていたディドロでは百科全書に対する受け止め方が違うのは当然のことであり、ル・ブルトンを責めることはできません。出版事業としての「百科全書」は古典的世界との対決であったといえます。そのことは、予約購買者が新興のブルジョワ階級であり、これはフランス革命の推進派となったことにもあらわれています。
この出版事業としてみたときの「百科全書」への感想としては、百科全書が単なる最大の出版物というだけでなく、その出版そのものが権力や旧体制との戦いであったのだということが印象に強く残っています。ディドロにとっては「百科全書」の執筆は封建的な宗教イデオロギーとの戦いであったのだと思います。
「社会思想中間レポート 出版事業としての百科全書の感想」
「百科全書」はジョン・ロック流の経験論とニュートンの打ち立てた新科学、およびこれから派生してきた感覚論・唯物論を核とし、これらの思想にもとづいて当時の技術的・科学的な知識の最先端を集めたもので、スコラ哲学、デカルト主義などの古典的世界観をうち破り、自由な考え方を普及するのに大きく貢献したといえます。しかし、「百科全書」が出版されたことの意義は、そうした思想的な功績だけではなく、権力側の検閲、また反対派による批判などの困難をくぐりぬけて刊行されたこと自体にあるといってもよいでしょう。
「百科全書」の出版が決まってから完成するまでの、流れは授業で習ったとおりですが、この様子は、まさにディドロの努力ばかりが印象に残るものとなりました。プラド事件や「精神論」事件などの危機や非合法出版物に指定されたことなど、体制側による「百科全書」への弾圧に耐え、当時としては最大であった出版物を完成することができたのはディドロなしには考えられないことです。途中で出版者ル・ブルトンによる無断書き換えが起こったりもしたが、...