複式簿記の本質的機能について
財務会計と簿記を一体のものとして捉えてきたこともあり、「複式簿記の本質的機能」といった場合、「財務諸表によって、一定期間の経営成績、一定時点の財政状態を明らかにするために、その継続的な経営活動を会計期間に区切り、記録、計算、整理、報告する」という財務会計の目的を担うための手段と考えていた。
貸借対照表の作成方法には、棚卸法と誘導法があり、現代の会計は複式簿記の記録を基礎として作成された会計帳簿に基づいて、損益計算書や貸借対照表を作成する誘導法が使用されている。すなわち、誘導法は複式簿記を前提としているので上述のように考えたのである。
「財務会計の目的を担うための手段」と考えるにしても、財務会計自体がその目的を達するための機能を有するとは考えにくい。一つの考え方として、その機能は、前提としている複式簿記に内在している機能であると考えられる。「複式簿記に内在している機能」に信憑性があるからこそ、そこから導き出された財務諸表が信憑性をもつと考えるのである。これは、経済活動すべてが勘定として記録されており、それによって財務諸表が導き出されるので、財務諸表の導...