『ソーントン・ワイルダー作『わが町』の主題について述べよ。』
ソーントン・ワイルダー作の戯曲『わが町』は、第1幕の「日常生活」、第2幕の「恋愛と結婚」、第3幕の「死」の計3幕から構成されている。この演劇は、「幕なし、装置無し」のなか、最低限の舞台セット、道具しか使わず展開される。もちろん場面は変わってゆくが、椅子やテーブル、梯子やベンチといった最小限の小道具だけをうまく使用し、観客には、あたかもその場面が先ほどと変化したかのように感じさせるのである。そのために、劇は役者の演出によって表現しなければならなかった。ワイルダーはこのことについて、「自由に演出する為である」と述べているが、その背景にはタイトルの『わが町』とは、今現実に生きている人類皆の『わが町』であるから、舞台背景に固定観念を持たず、観衆個々の故郷での生い立ちと重ね合わせて回想して欲しいというソーントンの思いが込められていると考えられる。また、『わが町』は、進行役として登場する舞台監督によって物語が展開されていく。彼は、舞台監督として、時には牧師や店員などの脇役として、また、語り手としても登場する。一人で何役もこなす一風変わっ...