『18世紀においてイギリスが他国に先がけて小説を生み出したのは何故かをイギリスの歴史とそれが生み出す社会を考察しつつ述べよ。』
17世紀において、政治的混乱や宗教的狂信を体験したイギリスは、18世紀に入って理性と良識を求めるようになった。人々はいわば神に向けていた目を社会と人間に向け始め、新しい市民層が誕生したのである。彼らが文学に求めたのは、事実あるいは事実らしい写実的な物語である。18世紀のイギリスにおいて世界のどこよりも早く小説が勃興し、隆盛を極めたのは、そうした市民社会の気運のもと、社会とそこに生きる人間の姿を真正面から扱おうとする小説家が登場し、また、人間と社会の姿の写実的な表現を可能にする「散文」の開発、さらに、小説という文学形態の市民社会への普及に貢献した印刷業や定期刊行物等のメディア、これらの条件が一時代に集まったことにあると考えられる。
以下、イギリスの歴史と小説が生み出す社会について考察していく。
【歴史的背景】
小説という文学形態が求められ、発展させる基盤となった「市民社会」の成り立ちについて、歴史的観点から述べる。イギリスにおける市民社会の起源は、1215年の...