物権とは絶対的・排他的な支配権であるが、他人からその支配状態が妨害にあったり、危険にさらされた場合にどのような権利を主張することができるかが問題となる。
1.物権の円満な実現に対する妨害又は妨害の危険がある場合、物権に対する侵害の除去、または予防を請求することができる。この権利を物権的請求権という。物権的請求権の根拠として定められた明文の規定は存在しない。しかし、民法は本権とは別に、仮の権利ともいえる占有権について占有訴権を認めている(民法197条以下)。さらに、占有訴権以外に本権の訴え(民法202条)が認められていることなどから、明文の規定がなくとも物権的請求権を認めることについて争いはないといえるだろう。
2.物権的請求権を認める理論上の根拠としては、幾つかの見解が挙げられているが、物件に対する妨害や危険にさらされた場合に、その妨害の除去を請求する力を物権的請求権が持つことが必要だと考えられるので、物権の直接支配性に基づいて認められるとする見解にその理論的根拠が求められるといえる。
3.物権的請求権には以下の3種類がある。
①物権的返還請求権
物権の目的物の占有が侵奪さ...