教育の場における、家庭・学校・社会に関する著者の考察を解説するにあたって、近代社会から現代社会の、これらの関係を理解し、そしてその中でどう踏まえ、今後の課題を検討していく必要がある。
はじめに、近代社会における、家庭・学校・社会の関係についての著者の考察をみていく。
近代社会において、家庭はそれまで担ってきた、養育や訓育、躾といった機能は他の施設や場所に移され、本来の機能を失いつつあり、それら機能は家庭教育に役割があると、認識されていながらも、学校教育にそれらが求められるようになった。学校は次第に家庭的機能も担ってきたのである。しかし、家庭・家族の観念は欠落せず、重要視されたのである。
社会との関係においては、国民に権利や自由が認められるようになり、社会は封建社会より広い範囲で自由度の高い社会秩序で構成された。その中で、学校教育は「上級学校に進学することが、自分達の社会的地位を決定する」(テキスト106頁)ように、社会的秩序を作り上げるため、一人一人の社会上の移動や、社会上昇の手段としてみなされる傾向にあった。その反面、過激な立身出世の競争は、新たな差別や混乱を生み出すとされ、道...