2分冊
略題 愛と成長
ルソーの愛の出発点は「自己愛」である。自己愛をすべての情念の源であり、生涯持ち続ける唯一の情念であると定義した。また、自己愛は常によいものであり、正しい秩序にかなっているとしている。人間は、自己の保存のために自愛し、その発展として自分の身を守ってくれるものを愛するようになる。ここで言われる愛は、生存本能の「欲」何かを欲することに似ている。
人間は弱い生物であるがゆえに、社会的になり、哀れみ、いたわりの感情を持って互いに愛することができるようになるとしている。
カントによると、愛は感情であり、意欲ではないために命令されて、またはしようと思って始めることのできる感情では無い。そこで、「汝の隣人を愛せよ」を、実践的な愛、すなわち神の命令を喜びを持って実行し、隣人に対する義務を果たすことであるとした。隣人への義務、つまりは他人への親切な行動の習慣を身につけることで人間愛が引き起こされていくと考えている。実践的な愛は命令可能であるが、この愛を感覚的な愛に変化させることは実際には命令不可能である。そのため、被造物である人間が「神聖性の理想」に近づくための努力目標であるととら...