『もの食う人びと』を読んで
世界各国、どのような状況下でも人は何かを食べる。食べるという営みを行うことによって人々は生きているからだ。では人びとは今、どこで、なにを、どんな顔をして食べているのか。そして食べる営みをめぐり、世界にどんな変化が兆してるのか。そんな筆者自身の問いから、世界中の人々の食に対する意識や、ひもじさ、食をめぐる変化、そして紛争などが食に与えている影響などに筆者が触れてゆく長旅を書き記したものが、本書である。本書では、一般的に世界情勢を報道するようなマクロな視点から始まるのではなく、人々の「食」というミクロな視点から、紛争・事故・天災・人災といったマクロを見ている。
本書ではまず、日本という飽食文化の中で、食に対して万事に無感動気味になったことを挙げている。ひいては、日本という国自体が日と本来の身体システムと身体のリズムに合わないビニールハウスふうの無菌、無風空間であり、体中の感官が窒息していたのではないかと。そんな舌と胃袋を異境に運び、怒り、憎しみ、悲しみの味を思い出させ、体中に詰まったデータや数値や分析情報をことごとく吐き出し、身体性を回復させる。以上を主たる目的...